中島厚志が読み解く「激動の経済」

2010年4月7日

»著者プロフィール
著者
閉じる

中島厚志 (なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

 金融危機の最悪期が過ぎ、景気の緩やかな回復とともに企業の業績も回復に向かっている。しかし、企業収益の回復はコストの削減に依存しており、売上高の減少は止まっていない。

 しかも、足元では日本企業の国際競争力の低下も取り沙汰されている。たとえば、サムソン等の韓国企業に比べてスピード感や積極果敢さの乏しい企業行動が懸念されている。あるいは、アップルのiPhoneのような、消費者に魅力のある製品の開発力に劣後しているとの声もある。そもそも、市場が成熟する中で日本企業は過当競争気味であり、デフレを深刻化させる要因ともなっている。

 確かに、近年の日本企業には心配すべき点が多い。その要因は多岐にわたり、主要国中で最高水準の法人税率、規模拡大を実現する統合への独禁法絡みの規制や依然数多い参入規制や権益保護など企業努力だけでは克服できない課題もある。しかし、以下では主として財務面から見た場合に、日本企業の競争力低下はどのように分析できるか論じてみたい。

日本企業の利益率は韓国企業を大幅に下回る

 ひとつ財務面で指摘できるのは、縮こまりがちとなっている企業行動である。たとえば、足元売り上げ減による利益減をコスト削減で打ち返して、収益の回復を果たしつつある企業行動もプラスとばかり言い切れない。

 足元での欧米企業の収益回復もコスト削減に多くを依存しており、日本企業の行動と大きな違いはない。しかし、足元の日本企業の売り上げ急落が経常利益に与えた影響が記録的であっただけに、それをコスト削減で全てカバーしたことは、本来営業進展に必要な経費や人件費までも削減したのではないかと心配される(図表1)。すなわち、営業力の一部を殺いでまで縮こまり姿勢を強めたのではないかとの懸念だ。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る