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2016年12月24日

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川手恭輔 (かわて・きょうすけ)

コンセプトデザイン・サイエンティスト

1990年代から、大手メーカーでインターネットサービスの企画・開発・運用を手がけ、自ら立案したグローバルなサービスを複数立ち上げた経験を持つ。その1つは、サービスのデザインでグッドデザイン賞を受賞した。コンピューターサイエンス関連の翻訳本も多数ある。

 昨年の6月に、その直前にIPO(新規株式公開)を実施したフィットネス・ヘルスケア機器メーカーのフィットビット(Fitbit)を紹介したが、日本での事業を促進するために11月に開催されたプレス向けの本社ツアーに参加した。フィットビットの本社はサンフランシスコ市内のSoM(マーケット通りの南側)と呼ばれる地域にある。マーケット通りから進むと2ブロック手前で、サンフランシスコで1番、米国の西側では2番目に高くなる(空港からのリムジンの運転手の話)という61階建てのセールスフォース・タワーが建設されつつあった。

エリック・フリードマンCTO(左)とジェームズ・パークCEO(右)

 2006年の12月のある朝、ジェームズ・パークはひどく興奮していた。その日に発売される任天堂のビデオゲームWiiを買うために、朝6時からベストバイ(米国の大手量販店)の行列に並んだという。

 センサーとソフトウェアを組み合わせた衝撃的な製品はゲームの概念を変え、子供も大人もその新しい経験を楽しんだ。次々に開発されるデジタル技術によって、スマートフォンのようなそれまでにない経験を提供する製品を生み出すことができるはずだ。そう考えたパークは、エリック・フリードマンと共にフィットビットを創業した。彼らは、それは素晴らしい瞬間だったと語った。

2007年3月創業の同社は「ウェアラブル」という言葉が流行する前の2009年に、いわゆる万歩計を発売して以来、一貫してフィットネスとヘルスケアにフォーカスした機器をつくり続けている。

2013年にリストバンド型のフィットネストラッカー(活動量計)を発売し、 2014年には心拍計を備えたモデルを追加して売り上げを伸ばし1090万台を出荷している。売り上げの伸びも凄いが、その粗利率(48%)の高さも驚きだ。やはりハードウェア企業のIPOは、その企業価値が明快で見ているだけでも気持ちがいい。(昨年6月のコラム)
 

 11月に発表された第3四半期の決算資料などを元に、その後の業績の推移をグラフに追加した。2016年の売上げは同社予測、1-9月実績の粗利率45.1%を用いて作成した。2015年は前年に対して+150%の成長だったが、今年は+25%程度の成長に止まる見込みだ。

写真を拡大 業績の推移

 12月5日にIDCが発表した第3四半期のウェアラブル市場のメーカー別の数量シェアでは、フィットビットがトップの座を守っている。市場全体では2015年が対前年で+72%の成長だったが、今年の第3四半期は+3%とほぼ横ばい(2300万台)になっている。新製品(AppleWatch2)の発売を控えたアップルの落ち込みが大きい。フィットビットは480万台(15年第3四半期)から530万台に+10%伸びている。

写真を拡大 ウェアラブルデバイスの市場シェア(IDC資料から作成)

 ウェアラブルデバイスは、アップルやサムスンの製品のようにスマートフォンのようなアプリが動くスマートウォッチと、活動量を記録するためのフィットネストラッカー(活動量計)との2つに分かれる。フィットビットを含めて上位を占める3社の製品は後者に分類される。

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