BBC News

2016年12月23日

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同級生に背中を蹴られて倒れる12歳少年――。中国の学校で起きたいじめの様子を撮影した衝撃的な映像に、またしても国民から怒りの声が上がった。いじめは中国だけの問題ではないものの、中国では一部の親が、学校側の対応が不十分なため自分たちで何とかしなくてはと考えている。

中国の親たちがいじめにどう取り組んでいるのか、そしてなぜ自分たちで対応しなくてはならないのか、背景を探った。

ソーシャルメディアでいじめっ子を非難

中国では、いじめられた子供の親がソーシャルメディアで、いじめる側を非難するのは、もはや定番の対応法となっている。いじめる側をネットで徹底的に非難し、同調者を集めてから当局に圧力をかけて、対応を促すのだ。

北京在住の母親は、10歳の息子へのいじめについて、交流アプリ「微信(ウィーチャット)」に投稿した。母親によると、いじめが1年続いた挙句、ついには排せつ物やごみを投げつけられたという。息子は急性ストレス障害の診断を受け、最終的に学校を退学した。

通っていたのは北京でも有名な中関村第2小学校で、母親によると学校側はいじめの訴えをまともに聞き入れなかったという。

「私たちが被害者なのは明白だ。学校には対処と謝罪をお願いしただけだ、なぜこのような扱いを受けるのか」と母親は投稿した。

母親の悲痛な投稿に、ユーザーたちの共感と学校への批判が高まった。すると学校はただちに反論の声明を発表し、生徒同士のいさかいはいじめと呼ぶようなものではなかったと主張した。

その時点ですでに、数百万人が母親に同情を示し、国営メディアまでが取り上げていた。

いじめへの批判がソーシャルメディアで集まる一方で、ソーシャルメディアこそあからさまないじめが横行する場所でもある。

中国の国家インターネット情報弁公室(CAC)は昨年、いじめに関する写真や動画の投稿を禁止したが、問題が解決していないことは明らかだ。

四川省で撮影された投稿動画では、少女が裸にされ、ほかの生徒たちから叩かれる様子が映っていた。生徒がひっぱたかれたり、蹴られたり、さらには鉄パイプで殴られたりする様子の映像も、ソーシャルメディアに投稿された。

親が賠償を自ら交渉

最近広く拡散された動画では、中国南部の深セン市で撮影された。学校の不良集団に「みかじめ料」の支払いを拒否したとして、12歳の少年が暴行される様子が映っている。

映像には、10代の少年たちと話す少年の姿が見え、そのうちの1人に蹴られ倒れる様子が映っている。床に倒れたまま、体を丸めた少年は何度も蹴られた。

この動画に非難が集中し、市は急きょ、当事者を仲裁する会合を開いた。

市当局者は19日、暴行した少年たちの家族が謝罪し、被害者の医療費の支払いと「そのほかの損害」への補償に同意した、と明らかにした。

いじめ問題の解決に補償金を求めるのは、正しい方法に思えないかもしれない。しかし北京の弁護士、チャン・ヤンフェンさんは、中国では良くあることでむしろ推奨されていると話す。

「全員にとって最善で、協調的な方法だと考えられている。もし解決できなければ、親には法的措置を取るよう助言する」

被害者が直面する障害

補償金を要求したり、ソーシャルメディアでいじめる側を辱めたりする方法が好まれるのは、法的措置よりもてっとり早く、効率的だからだ。

補償金請求なら「数日で済む」ところを、法的措置に訴えれば、解決に数カ月か数年かかる場合もあると、チャン弁護士は話す。

しかし、深刻ないじめのほとんどについて、親が法的手段に訴えるのは逆に困難だ。14歳から18歳の未成年が刑事責任を問われるのは、殺人や強姦といった重大犯罪に限られている。

未成年者を保護する法律では、学校に対し、「いじめ抑止」の教育と「被害者の安全確保」を求めている。しかし、活動家らは法律の文言はあいまいで、罰則も定められていないと指摘。社会や学校がいじめ問題を真剣に捉えていないことの表れだとしている。

中国政府は、ガイドラインの改定など問題に取り組む姿勢を示している。しかし多くの親だけでなく、国営メディアでさえも、より厳しいいじめ対策が必要だと主張している。

中国共産党機関紙・人民日報系の「環球時報」は今週、現行のいじめ対策には「実効性がない」と指摘した。国内の学校でのいじめに関する公式な統計や分析は公表されていない。

同紙は、「学校でのいじめはいかなるものも許されるべきではない。(略)子供はまずなにより、学校当局や親から十分な指導を受けなくてはならない。学校や親は、面子を守りたいからと、いじめを当たり前のことと黙認してはならない」と書いた。

いじめを構造的な問題としてとらえて取り組むのではなく、個々に解決してはおしまいにし続ける限り、親は子供を守るために異例の手段に出るしかないと、専門家たちは指摘している。

(テッサ・ウォン記者)

(英語記事 Why China's parents tackle bullies on their own

提供元:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-38390627

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