田部康喜のTV読本

2016年12月28日

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田部康喜 (たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 この年の紅白の大トリは、今年で解散するSMAPの「not alone」だった。前述の著作のなかで、太田省一は次のように指摘する。

 「『not alone』の歌詞には『上を向いて歩こう』を連想させる、次のような一節があった。『遠く離れた きみが今見る空は ぼくの見る空と同じだと気づく』。この歌詞は、『幸せは空の上に 幸せは雲の上に』という、『上を向いて歩こう』の一節とどこか通じるところがありはしないだろうか」

人々の不安をいやす歌

 金融資本主義とグローバリズムが地球を覆いつくしたいま、格差の拡大とともに、国民国家は揺れ動いている。英国のEUからの離脱や米国の新大統領にドナルド・トランプ氏が就任するなど、メディアの予測を超えた各国の国民たちの不満と憤りが世界を変えようとしている。大国間のパワーバランスも大きく変化していくことだろう。

 日本もまたその外に安住することはできない。人々の不安は解消されない。

 歌はそうした感情をいやしてくれる。今回の紅白では、デビュー20周年のPUFFYと来年に20周年を迎えるKinKi Kidsが初出場する。PUFFYは紅白のスペシャル・メドレーを、KinKi Kidsはデビュー曲の「硝子の少年」を歌う。

 「失われた20年」を経て、彼らの歌もまた誕生時に人々が抱いた感情を超えて、新たな意味を見出すのではないだろうか。

視聴率と「昭和」への郷愁

 今年の紅白のテーマは「夢を歌おう」である。2020年東京五輪の前年の19年まで4年間にわたって、このテーマを掲げるという。

 紅白の視聴率は、1964年東京五輪の前年の第14回に記録した81.4%である。これは過去の視聴率でも群を抜いた第1位である。ちなみに、第2位は東京五輪の女子バレーボール決勝戦「日本×ソ連」(1964年10月23日)の66.8%、第3位は2002年FIFAワールドカップ・グループリーグ「日本×ロシア」(2002年6月9日)の66.1%である。

 NHKが紅白にかける意気込みは、前回の東京五輪に向けた熱気の再現にかけているようにみえる。

 映画「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズが描いているように、「昭和」は現代と比べて必ずしも暮らしやすい時代ではなかった。この映画のなかで、東京の大気汚染による「スモッグ」や社会の底辺で医療も受けられずに働く女性も多かった。犯罪も現代よりも多い。

 平均寿命も、1960(昭和35)年には男性が65.3歳、女性が70.1歳だった。平成27(2016)年には、それぞれ80.7歳と87.0歳に伸びている。

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