2024年4月19日(金)

報道にはすべて裏がある

2017年1月3日

懸念される日韓合意の破棄と、日ソ共同宣言よりも後退した共同経済活動

 さらに、国際情勢でもうひとつ挙げるとすれば、韓国だろう。大晦日の晩に、釜山の日本総領事館前の路上に設置された少女像(いわゆる慰安婦像)の除幕式が行われた。市民団体が設置しようとしたところ、いったんは地元自治体がこの像の設置を認められないとして撤去させたはずなのだが、市民などからの猛抗議に屈服して自治体が設置を認めてしまったのである。

 少女像をめぐっては、2015年末の日韓合意で、外国公館の威厳の侵害防止を定めたウィーン条約に違反するとしてソウルの日本大使館前に設置された像の撤去を求めた日本側に対し、韓国の尹炳世外相は「日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」と約束したはず。

 もはや死に体の朴槿恵政権に、世論の猛反発を買ってまで像の設置を阻むことは期待すべくもないとはいえ、こうもあっさりと政府間の合意が反故にされてしまっては、呆れざるを得ない。

 今年予定されている大統領選挙では、年末に国連事務総長を退任したばかりの潘基文氏や野党・共に民主党の文在寅氏などが有力候補とされているが、大統領選後は日韓合意そのものを破棄することを示唆する候補が少なくない。「最終的かつ不可逆的に解決」されたはずの慰安婦問題が振り出しに戻る恐れが十分にある。残念なことではあるが、今年の日韓関係の大きな難題となるのは避けられそうにない。

 沖縄の基地問題が漂流し、日韓関係がぎくしゃくすれば、喜ぶのは誰か。

 昨年末にあった外交上の大きなイベントとして日露首脳会談がある。どうしてこの会談がもっとメディアに批判されないのか、不思議だ。平和条約締結後に、色丹と歯舞の2島を引き渡すとした1956年の日ソ共同宣言よりも後退し、共同経済活動なるふわっとしたものと引き換えに3000億円もの投資をロシア極東やシベリアに実施することを約束させられてしまったのである。日露両国の法律がどう適用されるかも分からずリスクが多いのに、人口も少なく水産資源の他にはさして何もないこの島で経済活動をしようという企業が日本にどれだけあるのだろうか。

 ロシア側の報道によると、プーチン大統領は、領土交渉に踏み込むことに意欲を示していたというが、国防省や外務省の巻き返しにあって、急速にトーンダウンしたという。やはり一筋縄ではいかない国だ。年明け以降、安倍晋三首相は訪露して交渉を続けるというが、取るものを取ったロシアが一気に冷淡な反応を示す可能性はおおいにある。公安関係者のあいだでは、外交上の失点を挽回するため、安倍首相が電撃訪朝するという怪しげな噂が早くも流れている。


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