2024年4月24日(水)

World Energy Watch

2017年1月6日

日本が学ぶべきこと

 製造業の雇用が減少した米国では、高賃金の製造業での雇用を求める声がトランプ大統領を作り出したと言えるが、製造業の雇用が減少しているのは日本も同じだ。図‐4の通り、製造業の雇用減少に合わせ平均給与も下落している。

 米国と同じように製造業の賃金水準が相対的に高いのも、図⁻5が示す通りだ。1997年をピークに平均給与が減少している日本も製造業の復活がなければ、平均給与も上昇せず、国民の6割を超えた「生活が苦しい」人も減少することはない。

 日本企業は、失われた20年の間イノベーションへの研究・開発投資を増やすことをしてこなかった。日米の研究・開発投資の推移は図‐6の通りだ。これでは、製造業の復活は難しい。政府のエネルギー関係予算も日本では減少している。エネルギー分野でのイノベーションも遅れ、エネルギーコストも下がらず、製造業の競争力にも影響が生じる。

 経済成長が実現しなければ、イノベーションのための投資は増えない。1月4日付朝日新聞は「経済成長は産業革命以降の出来事。経済成長が実現しなくても、この20年間スマホなどの登場により国内総生産(GDP)では測れない便益の向上があった」として、経済成長は必ずしも必要ないとの記事「経済成長永遠なのか」を掲げている。

 GDPでは測れない便益の向上があるのは事実だが、それだけで私たちの暮らしが豊かになっているわけではない。この20年間で「生活が苦しい」という人は国民の約3分の1から6割強まで増えた。利便性が向上しても生活にゆとりが生まれるわけではない。ゆとりは収入増が生み出すものなのだ。収入が減れば生活は苦しくなる。技術の進歩による利便性の向上と収入増によるゆとりを同レベルで論じ、経済成長不要と主張するのは間違いだろう。

 米国以上に、日本では製造業復活、そのためイノベーションが必要なことを認識し、経済成長の実現、エネルギーコスト削減に向け努力すべきだ。

  
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