2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年1月10日

 上記の解説記事は、アラブ世界を紛争に脆い地域として、厳しく分析しています。アラブ諸国はアラブの春からほとんど学んでいないと言っていますが、この挫折は独裁者を倒した後の国づくりの難しさを浮き彫りにしています。独裁者に代わって統治の任に当たる受け皿がなかったのです。イラク、エジプト、リビアなどはそれぞれ事情は異にしたとはいえ、独裁者に代わって統治できるものがいなかった典型的な例です。

遠い民主政権

 アラブ諸国に限らず、独裁政権がうまく民主政権へ移行した例は多くありません。成功例として挙げられるのは、韓国と台湾ですが、両者の場合、中産階級が育ったのが成功の大きな要因として挙げられています。中産階級は経済発展があって初めて育ちます。アラブ諸国の場合、産油国は別として、概して適切な経済政策が実施されておらず、経済発展が上手く行っていません。論説が指摘するように、若者の失業率が高いのも産業が発展していないためです。また経済が発展しなければ、民主政権の基盤となる中産階級が育ちません。怒れる若者だけでは独裁政権に代わる政権は作れません。

 論説はアラブ世界で次の騒乱がもうすぐ起きるだろうと警告しています。騒乱が起きても新たな国づくりの担い手がいなければ、事態は進展しません。その間、騒乱で経済発展はさらに遅れ、さらなる騒乱の芽がはぐくまれる恐れもあります。アラブ諸国の将来は、国連のアラブ開発報告書が示唆する通り、厳しいと言わざるを得ません。

  
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