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2010年4月26日

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 3月19日、インドが予想外の金利引き上げに踏み切ったことに、金融関係者はちょっとしたショックを受けた。2009年10~12月期の実質成長率が7~9月期より減速するなど、中国と違って景気過熱の兆しがないので、利上げはもうちょっと先と、タカをくくっていたからだ。だが、利上げを実施したインド準備銀行(中央銀行)は全く別の心配をしていた。インフレ圧力の高まりである。4月20日には、さらに2ヶ月連続となる利上げが実施された。

 モンスーン期における雨不足からコメ等の農作物の不作が見込まれているという事情はある。09年度の生産見込みはコメが前年比18%マイナス、雑穀が同20%マイナスといった具合で、エンゲル係数の高いインド家計を直撃していた。だが、食品以外の生産品の卸売物価指数をみても油断はできないところまで来ていた。

 この卸売物価は、昨年11月には前年比マイナス0.4%で、12月もプラス0.7%にとどまっていた。ところが今年に入って、1月は2.8%のプラスとなり、2月の上昇率は4.8%にハネ上がった。卸売物価全体の上昇率は2月には9.9%となり、3月は10%を突破して2桁になるリスクがある。

 インド準備銀行は利上げの発表文にこうした生々しい数字を挙げる。BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)投資を持てしていた投資信託などの販売担当者たちは、個人投資家にこうしたリスクをどれだけ指摘してくれていたのだろうか。地球の反対側のブラジルでも、利上げに向けた動きが着々と進行中だ。

 インドの利上げ決定の2日前の3月17日、ブラジル中央銀行は政策金利を8.75%に据え置いたが、この決定を支持したのは8人の政策委員のうち5人だけ。残り3人は0.5%の利上げを主張した。「4月の次回会合までに経済状況を注視し、次の金融政策を決定する」との声明を発表していることから、次は利上げとの見方が市場にも浸透している。

 2月の消費者物価上昇率が4.8%と、1月の4.6%を上回るなど、ブラジルでもインフレの圧力が高まっている。3月25日に発表された政策委員会の議事録によると、今年の物価上昇率は目標とする4.5%を上回るとの見通しが示され、政策金利を調整していく必要性についても委員の間で一致が見られた。後は時間の問題というわけだ。

過剰流動性に陥る中国
金利引き上げも近い

 出口という点で注目されるのは、やはり中国だ。今年に入って銀行の預金準備率を16.5%まで引き上げている。ただ民間銀行が預金に応じて中国人民銀行(中央銀行)に積み立てる預金準備率を引き上げても、肝心の政策金利を上げないことには金融引き締めの効果はなかなか進展しない。政策金利の代表である貸出基準金利はといえば、1年物で5.31%と低めの水準に据え置いたまま。インドやブラジルとはちょっと勝手が違う。

 今後の政策運営を占ううえで注目されるのは、3月14日まで開かれた全国人民代表大会(全人代)だ。経済成長率8%前後、都市部失業率4.6%以下など、10年も09年と判で押したように同じ数値目標が並ぶが、むしろ興味深いのは09年の目標と実績の乖離だ。

 金融関連の数値で目標と実績の開きが大きい。例えば、17%前後としていた通貨供給量(M2)の増加率。実際には27.7%と大きく上ブレしている。5兆元強が目標だった新規銀行貸出の増加額も、実績は9兆6000億元に達した。前年比の伸び率は実に95%で、円換算すると約130兆円にのぼる。これだけの銀行貸出が増えたのだから、不動産などの価格が上昇しバブルが起きない方がおかしい。

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