2024年4月17日(水)

From LA

2017年1月8日

 最後が現在NVIDIA社が最も注力する自動運転システムだが、同社は片手に乗る大きさのAIカー・スーパー・コンピュータを開発している。この小さなデバイスにはXAVIERという高性能なコンピューターチップが装備され、これが自動運転に必要な、膨大な計算処理能力を提供する。

 NVIDIA社が公開した自動運転システムのデモの一つは、複数のカメラからの情報を処理して行う機能を見せた。外側に向けたカメラの他、ドライバー自身をモニターするカメラがあり、前方の障害物を察知し、ドライバーの視線がそちらに向いていない場合、警告を発するなどの機能がある。

 AIを中核に据えた自動運転システムの特徴は「自分で考え、判断する能力がある」点とも言え、ユニークなのは道路状況、障害物の多さなどから「自動運転ではすべてを防ぎきれない」と判断した場合、ドライバーに運転の交代を要求するというアプローチも提案された。つまりAI自身が「自分で運転できる自信があるかそうでないか」を判断できる、という。NVIDIAではこのシステムを「AI Co-Pilot」と呼ぶ。AIはドライバーとナチュラル・ランゲージ・プログラムにより対話するが、カメラを使ってドライバーの唇の動きを読み取り、音声が聞き取れない場合でもドライバーの認識率を向上させることができるという。

ボッシュに採用されたシステム

 同社のAIコンピュータシステムは、世界最大級の自動車サプライヤーであるボッシュ社に採用され、今後世界中でカーコンポーネントとして利用される。さらにNVIDIA社は自動運転システムにおいてドイツのアウディ社との提携を発表、「2020年には完全自動運転の車を完成させる」と宣言した。

 2017年はAIが本格的な企業での実用化を果たす年になるだろう、と言われる。単なるデータ処理、分析ではなく、そこから自分で判断し結論を導き、学んだ結果から自分を進化させるAIは、自動運転のコアシステムだけではなく様々な分野で能力を発揮できる可能性がある。自動車メーカーとNVIDIAのようなAI開発企業との連携は今後ますます進むだろう。

 2020年には自動運転の実用化を目指す企業は多い。グーグル、フォードもこれまでに同様の宣言を行っていた。今後の開発競争の中でどのシステムが最も安全性を確保しながら自動運転の汎用に成功するのか、それぞれのシステムが統合されるのか、あるいは様々な技術が今後の競い合う方向となるのか。今後3年間の動きに注目が集まりそうだ。

【修正履歴 2017.1.18】

「ゲームソフト会社が作る自動運転システム」。NVIDIA社は、コンピュータ向けのグラフィックス処理や演算処理を高速化する半導体、GPUを発明し、PC ゲーム市場の拡大に貢献してきた「グラフィックス半導体メーカー」であり、「ゲームソフト会社」ではありませんでした。タイトル、本文内容の一部において事実誤認がありましたので、修正いたします。

  
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