前向きに読み解く経済の裏側

2017年1月16日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

対中関税により米国の外交上のメリットも

 対中関税を課すことで、米国は世界に向けて「米国の利益のためなら、今までの政権が採らなかった手段も躊躇なく採用する」というメッセージを発することができます。それにより、対米ダンピング輸出をしている外国企業に対してはもちろんのこと、輸入関税が高かったり為替レートが割安だったりする国の政府に対しても、「是正しないと次は貴国が関税の対象になるよ」という脅しになります。

 さらに、「米国政府は何をしでかすか予測不能」と各国の首脳が考えれば、反米的な政権が少し親米的な姿勢に変化するかも知れません。日本も、「在日米軍の費用は全額負担しないと、米軍が撤退してしまうかも」という恐怖心から、費用負担に応じるかも知れません。

 実際に対中関税を課する前にも、「関税を課すかもしれない」というアナウンスは、中国向けの大きな抑止力となり得ます。「仮に中国が尖閣諸島に攻め込んだら、軍隊で反撃する以前に対中輸入を禁止する」と予め宣言しておけば、中国が尖閣諸島に攻め込むことはないでしょう。

 さらに大胆に頭の体操をするとすれば、仮に米国が台湾と国交を樹立したとしても、中国が採り得る手段は限定されるでしょう。中国が本気で米台国交樹立を阻止しようとしたら、「国交樹立を認めないなら、高率の対中輸入関税を課す」と言えば良いからです。

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