BBC News

2017年1月12日

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ドナルド・トランプ次期米大統領は11日、大統領当選後初の記者会見を開き、ロシア政府が自分の不都合な私的情報をつかんでいるという内容を米情報機関がマスコミに漏洩(ろうえい)したと批判した。

トランプ氏は「それはナチス・ドイツがやるようなことだ」と強い調子で非難した。

CNNなどは10日、米情報機関筋の情報として、トランプ陣営が選挙中にロシア当局と情報交換していたほか、ロシア当局がトランプ氏個人を恐喝できるような情報をつかんでいると報道。オンラインメディア「バズフィード」はこれに続き、トランプ氏のプライベートな性的ビデオの存在に触れた未確認文書を掲載した。記者会見でのトランプ氏の発言は、前日の一連の報道に反応したもの。

一方でトランプ氏は公的に初めて、大統領選中に民主党本部のメールサーバーなどがハッキングされたのは、ロシアによるものだと認めた。

トランプ氏はさらに、自分の事業の全権を息子2人に譲る方針だとあらためて表明した。

記者会見は当初、実業家としての立場が大統領職に抵触するかどうか、トランプ氏が説明する場になる予定だったが、前日の報道を受けて、ロシアに弱みを握られているのかどうかに関する質問が集中した。

トランプ氏は、問題となっている機密情報は「決して書かれるべきではなかったし、紛れもなく決して公表されるべきではなかった」と述べ、「なにもかも偽ニュースだ。でっちあげだ。あんなことはなにもなかった」と批判。

「あのでたらめ」は「病んでる連中」がまとめたもので、「まったくみっともないひどい話だ」とトランプ氏は強調した。

トランプ氏は6日にロシアの選挙介入について情報機関幹部から説明を受けているが、その内容について会見で明らかにするつもりはないと述べる一方で、その場には「証人が大勢いた」と指摘。ブリーフィング内容を情報機関がマスコミに漏洩したなら、それは情報機関の評判に「とんでもない汚点」を残すころになると釘を刺した。

さらに会見の後半でトランプ氏は重ねて、「みっともないことだと思う。情報機関が、これほど結果的にとことん嘘で偽な情報を外に出させるなんて。みっともないと思う」、「まるでナチス・ドイツがやるようなことで、実際にやったことだ」と付け加えた。

これに対してホワイトハウスのジョシュ・アーネスト報道官は「いかなる立場の人だろうと、(国の情報機関の)愛国者たちの高潔な誠意と動機を疑うなど、きわめて見当違いだ」と反応した。

記者会見の後、ジェイムズ・クラッパー国家情報長官は、トランプ氏の弱みをロシアがつかんでいるという内容の文書についても、トランプ氏に説明したと表明。情報機関としては、文書の内容について「判断を留保している」とトランプ氏には伝えてあると明らかにした。また、情報をマスコミにリークしたのは情報機関関係者ではないと考えていると、これもトランプ氏に伝えたという。

記者会見とは別に、国務長官に指名されているレックス・ティラーソン氏は、上院の承認公聴会で、民主党本部ハッキングの黒幕はプーチン露大統領だったと考えるのは「妥当だ」と答えた。

「ごみの山だ」

CNNが、ロシア当局とトランプ陣営の関連やロシア情報機関がトランプ氏の弱みを握っている可能性などについて報道したのに続き、バズフィードが35ページにわたる未確認文書を丸ごとインターネットに掲載。バズフィードが掲載した未確認文書の中には、トランプ氏個人の事業に関する問題と、モスクワのリッツカールトン・ホテルで売春婦を使った性的行動についてロシア当局が証拠を握っていると書かれていた。

トランプ氏は記者会見で、バズフィードを「どんどんダメになっていくゴミの山」と罵倒し、CNNに対しては「偽のニュース」を「わざわざ余計な手間暇をかけて、大げさにした」と批判した。

これに対してCNNのホワイトハウス担当記者が繰り返し、質問の機会を求めたが、トランプ氏は「ダメだ」と質問させなかった。

CNNはこの後、自分たちの記事は「丁寧に裏付けを取った報道」で、「バズフィードとはまったく違う」と反論している。

記者会見でBBCのイアン・パネル特派員が名乗ると、BBCニュースに対しても、「あそこも大したものだ」と皮肉を込めてあてこすった。

トランプ氏は記者会見で、前日の報道内容を否定し、「高名な人物」として自分はロシアだけでなく外国を旅行する際には常に身辺に細心の注意を払い、ホテルではカメラがあちこちに隠されているという前提で注意していると述べた。

記者会見に先立ち、ロシア政府も報道内容を全面否定。ディミトリ・ペスコフ大統領報道官は、「クレムリンはドナルド・トランプに関するコンプロマート(失墜させられる情報)を持っていない」、報道内容は「パルプフィクション(三文小説)」で「明らかに両国関係を傷つけることが目的」の行為だと批判した。

米情報機関が、大統領選中に民主党本部をハッキングしたのはロシア政府だと結論していることについては、トランプ氏は初めて「ロシアだと思う」と公の場で認めたものの、「この国はほかの連中にもハッキングされる」と付け加えた。

「ハッキングの話をするし、ハッキングは悪いし、やったらいけないことだ」とトランプ氏は述べた上で、「何がハッキングされたか見てみるといい。あのハッキングで何を知ったか(略)ヒラリー・クリントンは討論会の質問を事前に入手したのに、報告しなかったんだ」と重ねた。

選挙戦中に自分の選対関係者がロシア当局と連絡を取り合っていたという報道内容について質問されると、トランプ氏はこれには答えず、プーチン大統領によるハッキングは止まなくてはならないと述べた。

「(プーチン氏は)やるべきじゃない。今後はやらない」とトランプ氏は付け加えた。

また、トランプ氏がメキシコ国境の壁建設費はいずれメキシコが払い戻すことになると述べたことについて、メキシコのペニャニエト大統領は「もちろん払わない」と反論した。


<トランプ氏会見の他の要旨>

・大統領職と実業家としての立場の利益相反を避けるため、事業すべての全権を正式に息子2人(ドナルド・ジュニアさんとエリックさん)に譲った。事業運営の内容は「僕に相談しない」で行う。

・米国から外国に移転する企業には「大規模な国境税」を課す。

・退役軍人長官にデイビッド・シュルキン現次官を指名。

・オバマ大統領による医療保険改革法(ACA、通称オバマケア)を撤廃すると「ほぼ同時に」、代替の医療保険制度を導入するための計画を提出する。

・メキシコ国境沿いの壁建設はできるだけ早く開始する。建設費は当初は米政府が拠出するが、「メキシコが何らかの形で(中略)払い戻すことになる」。


「ロシアとは何の関係もない」

記者会見の前にはトランプ氏はツイッターで、報道内容に激しく反論していた。

「情報機関はこの偽ニュースが世間に『リーク』されるのを、決して許すべきじゃなかった。僕への最後の一撃だ。ここはナチス・ドイツか?」、「僕が選挙に楽勝して、偉大な『運動』の正当性が確認されると、悪い反対勢力が偽のニュースを使って、僕たちの勝利を貶めようとする。残念なありさまだ!」、「ロシアは今まで一度も僕に圧力をかけたりしてない。僕はロシアと何の関係もない。取り引きもない、借金もない、なにもまったくない!」 (太字は原文の大文字強調部分)

バズフィードが公表した文書では、トランプ氏の顧問弁護士マイケル・コーエン氏が2016年8月か9月にチェコ・プラハへ赴き、ハッキングについて話し合うためにロシア政府の代表と面会したと名指しされている。

会見に先立ちコーエン氏は、「今まで一度もプラハに行ったことなどない #偽ニュース」とツイートした

どのように報道につながったか

トランプ氏とロシア政府との関係については、数カ月前から政治やマスコミ関係者の間で指摘が飛び交っていた。

CNNなどの報道は英情報機関MI6の元職員、クリストファー・スティール氏が、トランプ氏と対立する独立した組織に提供した文書に基づくことが、BBCの取材で分かった。

スティール氏は現在、企業情報を扱うと自称する民間会社「オービス」代表。同氏は取材依頼に返答していない。

消息筋によると、米中央情報局(CIA)は文書の内容を「ありえる」と受け止めている。文書作成の当初の目的は、トランプ氏の選挙戦妨害だったという。

BBCは問題の文書を昨年10月に入手したが、その内容を裏付けることができなかった。すでにいくつか、客観的な事実誤認が指摘されている。

一方で米メディアによると、米情報機関はスティール氏によるこれまでの諜報活動の信頼性を評価しているという。

文書の存在は昨年10月、米誌「マザー・ジョーンズ」が最初に報道した

(英語記事 Trump condemns spy agency 'leak' of 'fake news'

提供元:http://www.bbc.com/japanese/38592092

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