2024年4月20日(土)

From LA

2017年1月29日

 一方で、3Dプリンターにはどれくらいの可能性があるのか。米英に工場などを持つテクノロジー会社、アルコニック社が独自のユニークなビジョンを紹介した。

 「ジェトソンズ」というキャンペーンで、同社は将来の3Dプリンティングで実現可能な様々なプロジェクトを挙げている。ジェトソンズとは1962年に米国で人気だったSFアニメで、そこには「空飛ぶ車」「3Dプリントされる建物や車」など、現在実現可能となっている様々な技術が空想の産物として紹介されていた。そこでアルコニックではジェトソンズにちなみ、アニメから100年後の2062年には可能となっている技術を探ってみた、という。

 まずは車のボディ。3Dプリントできるだけではなく、オーガニック素材を使って環境に優しく、また最大限のアエロダイナミクスを実現するボディが可能だ。3Dプリントのため車体に継ぎ目がなく、空気抵抗を最大限に減らせる。3Dプリントの車はすでに存在するが、アルコニックの技術はその先を見据えたものと言える。

 次に、航空機のボディ。これも同様にオーガニック素材を使い、アエロダイナミクスを実現させたもの。しかもサメの皮膚に見られる粒子を模倣した素材を使い、水中をスイスイと及ぶように空中で滑らかに移動できる技術を確立、飛行時間の短縮に繋げる。

建物も3Dプリントで作る?

 そして最も注目されているのが、建物の3Dプリントだ。省エネかつ風や地震にも強いフレーミングを3Dプリントで実現することで、アルコニックでは「地上高さ5キロ近い建物が実現できる」としている。また同社のコンセプトのユニークな点は、フレームだけではなく建物の躯体も3Dプリントで実現。そのため、窓とバルコニーが一体化したものなどが提供される。この窓がガラス張りのバルコニーにスイッチ一つで変換できる、という技術はすでに存在する。

 この技術は「ブルームフレーム・ウィンドウ」と呼ばれ、55秒で窓からバルコニーへの変換が行える。バルコニーの面積は3平方メートル、強化ガラスによりとフロント、床がガラス張りとなる。

 さらに、表面コーティングによりアルコニックが実現する高層ビルは「セルフ・クリーニング」機能付きだ。もともと汚れなどが付着しにくい素材だが、コーティングは太陽の光と水蒸気により「フリー・ラディカル」と呼ばれる粒子を放出する。この粒子が空気中の汚染物質を酸化させ、中和させる役割をも果たす。また建物表面についた泥、埃なども取り込み、雨が降った時に汚れ共々に流れ落ちるため、建物表面の清潔さが持続する。

 アルコニック社によると、このようなエコクリーンコーティングを施した929平方メートルの建物は、樹木80本分の空気清浄化能力に匹敵する、という。

 アルコニックは3Dプリントのみを提供する企業ではなく、エンジニアリング、マテリアル研究開発を通し、多くの業界にソリューションを提供する。その対象となるのは宇宙航空産業、自動車、建設、物流、エネルギー、軍事など多岐にわたる。

 このような技術力を持つ企業が考える2062年の世界。車は自動運転で空を飛び交い、空気は澄み渡り建物の超高層化により人々は余裕のある土地の使い方、暮らし方が選択できる。ジェトソンズで描かれた未来図が現在半分くらいは実現しているように、このビジョンもあと50年足らずで実現できるのだろうか。


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