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2017年1月24日

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木村正人 (きむら・まさと)

ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト。元産経新聞ロンドン支局長。米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員、慶應義塾大学法科大学院非常勤講師などを歴任。2012年独立。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)

 モルドバでは90年、ロシア系住民が「ドニエストル共和国」の分離独立を宣言。政府軍とロシア・ドニエストル軍の紛争が起き、停戦後、ドニエストル側はロシアに支配されている。

 紛争が凍結された形でロシアの管理が行われているため、「凍結された紛争」と呼ばれる。08年のジョージア(旧グルジア)紛争でもアブハジア自治共和国や南オセチアで同じ管理が行われている。

バルト三国に住む100万人以上のロシア系住民

 親ロシア派武装勢力が独立を宣言したウクライナ東部はプーチンの手中に落ちたも同然だ。バルト三国には合計すると100万人以上のロシア系住民がおり、ラトビアとエストニアでは国籍や市民権をめぐりロシア系住民の不満がくすぶっている。

 「トランプと彼の安全保障チームがNATOの使命継続を表明しないなら、プーチンのバルト三国やウクライナ侵攻にゴーサインを出すことになりかねない。平均的なウクライナ人は米国や英国からの助けがやがて来るとは信じていない。自分たちの軍や軍需産業に頼るしかないと考えている。米国は対ロシア制裁を縮小するのではなく、ウクライナ政府への支援を新たに補充する必要がある」とロペス氏は指摘する。

 ロシアはバルト三国や北欧諸国への領空侵犯を繰り返し、中東のシリアにも軍事侵攻した。プーチンは明らかに「影響力の境界」を拡張しようとしている。

プーチン大統領はロシアの「影響力の境界」を拡張しようとしている
(写真・MIKHAIL SVETLOV/GETTYIMAGES)

反EUの指導者たちが続々とプーチン支持を表明

 17年春に予定されているフランス大統領選で、反EU、移民排斥を唱える極右政党・国民戦線のマリーヌ・ルペン党首が勝利すれば、第二次世界大戦後、米国と欧州が積み上げてきた自由と民主主義の価値は完全に吹き飛んでしまうだろう。

 保護主義と孤立主義が世界を覆い始めるなか、独りほくそ笑んでいるのはプーチンだ。

 「英国の離脱が引き金になり、EUが崩壊して一つひとつの国民国家に逆戻りすることはプーチンの長期戦略と合致している。EU離脱に投票した英国人は結果的にプーチンを助けたことになる」

 こう解説するのは英シンクタンク、ヘンリー・ジャクソン・ソサイエティのロシア研究センター所長、フォックスオール氏だ。

 フォックスオール所長はオープンソースの情報からロシアのプロパガンダに利用されている人脈を分析した報告書「プーチンの有益な愚か者たち」をまとめている。報告書は、欧州に広がる反EUネットワークとロシアのつながりをあぶり出している。

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