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2017年1月18日

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バラク・オバマ米大統領は17日、2010年に機密外交文書を告発サイト「ウィキリークス」に漏洩した罪で2013年に有罪となり、禁錮35年の刑に服していたチェルシー・マニング服役囚(29)を減刑した。大統領としての任期満了を目前に、オバマ氏は209人の刑を減軽し、64人に恩赦を与えた。

「ブラッドリー・マニング」として生まれた元陸軍上等兵は、2045年に釈放予定だったが、大統領が指示した減刑によって来年5月17日に釈放されることになる。マニング服役囚は判決言い渡しの翌日に、自分の性自認は女性で、ブラッドリーという男性名ではなく「チェルシー・マニング」を名乗ると発表していた。

マニング服役囚の支援者たちは大統領の措置を歓迎したが、ポール・ライアン下院議長ら共和党幹部はこれを強く批判している。

マニング服役囚は2013年、外交・軍事機密書類やビデオ70万点以上を違法に所持し、配布した罪状22件で訴追された。情報提供を受けてウィキリークスが公表した情報の中には、2007年に米軍ヘリがイラク・バグダッドで複数の民間人を射殺する映像も含まれていた。

服役囚はさらに、グアンタナモ収容所の収監者たちについての報告書や、イラクおよびアフガニスタンでの戦争に関する軍事情報なども漏洩した。

大量の機密漏洩は米国史上最大規模で、米政府が面目を失う結果となり、オバマ政権は政府関係者による情報漏洩取り締まりを強化した。

判決言い渡しの際、服役囚は「米国に傷を与えた」ことを謝罪し、自分が「世界をもっと良い場所にできる」と勘違いしていたと証言していた。

カンザス州レブンワース陸軍基地の男性用刑務所に収容された服役囚は、昨年7月と11月の2度にわたり自殺未遂を起こした。7月の自殺未遂の後にはハンガーストライキを行い、性別違和症候群の治療を提供すると軍が合意するまで続いた。

ホワイトハウスはこのところ、マニング服役囚の減刑を前向きに検討していると示唆していた。

歓迎と批判と

服役囚の顧問弁護士デイビッド・クームズ氏はBBCに対して、減刑されて服役囚は大いに安心するだろうと述べた。

「オバマ大統領による実に素晴らしい慈悲の行為だ。私もチェルシーも、大統領の選択にとても感謝している」と弁護士は話した。

「マニング上等兵家族基金」のキアロン・オライリー氏は、「国連が違法だと宣言した戦争の真実を明らかにした」服役囚をそもそも収監したのが間違いだと述べた。

一方で、共和党重鎮のジョン・マケイン上院議員は、大統領の判断は「重大な間違いで、諜報行為の続発を促すことになると懸念する」と批判。ライアン下院議長は、大統領の判断は「ひたすらとんでもないとしか言いようがない」と非難し、マニング服役囚は「米国市民の命を危険にさらした」と攻撃した。

アサンジ氏はどうする

服役囚が漏洩した情報を公表した「ウィキリークス」の創設者ジュリアン・アサンジ氏は、避難先のロンドンのエクアドル大使館から「チェルシー・マニングへの恩赦のために運動したすべての人にお礼を言います。皆さんの勇気と強い意志の力が、不可能を可能にした」とツイートした。

ウィキリークスは昨年9月、もしオバマ政権がマニング服役囚に恩赦を与えたら、アサンジ氏が代わりに米国への強制送還に合意すると表明していた。

ホワイトハウスは、ウィキリークス側の表明とマニング服役囚の減刑は無関係だと説明している。アサンジ氏は、出頭する用意があるのか明らかにしなかった。

米司法省は、アサンジ氏立件の意向をこれまで示していない。スウェーデン当局が、性犯罪容疑で身柄引き渡しを求めている。

大統領恩赦と減刑

オバマ大統領はこれまでに、1385件の刑を減軽し、212人に恩赦を与えてきた。これはオバマ氏以前の12人の大統領全員の合計よりも多い。

米国では、恩赦を与えられると刑が執行されなくなるほか、公民権なども復活。投票できるようになるほか、銃器の所持も認められる。連邦裁判所の陪審員にもなれる。

減刑の場合、刑の執行は止まるが、投票や銃器の所持などの制約は残る。

恩赦も減刑も、無実を意味するわけではない。

スノーデン氏は恩赦しないのか

国家安全保障局(NSA)などの機密情報を漏洩し、ロシアへ亡命したエドワード・スノーデン氏についても、百万人以上がオバマ大統領に恩赦を求めてきた。

しかしホワイトハウスによると、スノーデン氏自身が恩赦に必要な書類を提出していない。

オバマ氏は昨年11月、独紙シュピーゲルに対して、「法廷に出廷していない人を恩赦できない」と話した。

ホワイトハウスは先週、マニング服役囚は米軍司法制度に身をゆだね、罪を認めていると指摘した。

これに対してスノーデン氏は2013年に米国を出国し、ロシアに一時的に亡命している。米国での罪状で有罪となれば、最大30年は服役する可能性がある。

ホワイトハウスのジョシュ・アーネスト報道官は、「エドワード・スノーデンによる情報漏洩は、はるかに深刻ではるかに危険なものだった」と述べたほか、スノーデン氏が「(米国の)敵の元へと逃れ、最近ではこの国の民主主義の信頼を失墜させようと大がかりに取り組んだ国に避難しようとした」と、マニング服役囚との違いを強調した。


<解説> なぜマニング服役囚を? ――ラジニ・バイディヤナザン、BBCニュース

チェルシー・マニング服役囚の事件は、米国世論を分断した。米軍の秘密を明るみに出した告発者だという人たちもいる。釈放を求めて10万人以上がホワイトハウスへの請願に署名したし、減刑活動は広く周知されていた。しかし、マニング服役囚は米軍関係者の安全を脅かした売国者だと受け止める人たちもいる。

ライアン下院議長は、オバマ大統領による減刑を裏切りだと呼んだ。2013年の判決公判を取材したが、検察の求刑は35年より長かった。検察は、機密漏洩の続発を阻止するため、警告効果のある量刑を求めると説明していた。

ホワイトハウスは、なぜマニング服役囚を釈放することにしたのか、判断理由をまだ説明していない。

オバマ大統領はむしろ、どの前任者よりも積極的に諜報活動取締法にもとづき大勢を訴追し、内部告発と戦っていると批判されていたのだ。


(英語記事 Obama commutes Chelsea Manning sentence

提供元:http://www.bbc.com/japanese/38659747

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