前向きに読み解く経済の裏側

2017年1月23日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

例外は、取り付け騒ぎ

 統計は、通常は当てになりますが、非常事態の時には当てになりません。「あの銀行が倒産しそうだ」という噂が広まって、預金者が一斉に預金を引き出しに殺到する「取り付け騒ぎ」の時です。多くの客が殺到すればするほど、本当に銀行の金庫がカラになって銀行が倒産してしまう可能性が高まるので、更に多くの預金者が預金を引き出しに来る、といった悪循環に陥ったら、そこから抜け出すのは大変です。

 そこで、取り付け騒ぎを防ぐためには、様々な仕掛けがしてあります。そもそも銀行の建物は、世界中どこへ行っても立派です。あれは、預金者に安心感を与えるためだと言われています。ゆうちょ銀行は、立派な建物とは言えませんが、ゆうちょ銀行には特別の安心感を感じている人が多いでしょうから、チョット別扱いですね。

 日銀には、「最後の貸し手」という機能があります。取り付け騒ぎに見舞われた銀行には、日銀が現金輸送車で駆け付けてくれることになっています。これによって預金を引き出しに集まった群衆を安心させて解散させよう、というわけです。

 それ以前に、取り付け騒ぎが起きないような工夫もなされています。一つには、銀行に対する各種規制です。自己資本比率規制などにより、銀行の健全性は確保されており、それは金融庁検査などによっても確認されています。

 今ひとつは、預金保険制度です。これは、政府(厳密には預金保険機構)が、原則として預金者一人当たり1000万円までの預金元本(及び利息)を保証してくれる制度です(詳細は預金保険機構のホームページなど御参照)。庶民の預金は、銀行が倒産しても原則として政府が銀行に代わって払い戻しに応じてくれるので、銀行が倒産するという噂を聞いても焦って預金を引き出す必要が無いのです。

 これは、本来は取り付け騒ぎを防ぐための強力な装置なのですが、残念ながら制度の存在があまり知られていないため、実際に取り付け騒ぎが起きた時には、あまり役に立たないだろうと言われています。

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