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2017年1月20日

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ジョアンナ・ジョリー、BBCワールドサービス

動物と恋に落ちれば、その動物を守りたくなるのでは?――。米写真家のジョール・サートーリさんはそう考え、絶滅危惧種の写真を撮り続けている。

サートーリさんが米誌ナショナル・ジオグラフィックで野生動物を撮影するようになって15年たったころ、妻のキャシーさんが乳がんと診断された。幼い子供3人の世話と、放射線や抗がん剤治療を受ける妻の看護のため、サートーリさんは1年の休職を決意した。

世界中を飛び回り写真を撮っていたサートーリさんにとってこの小休止は、腰を落ち着け、自分の仕事の意義について考え直す良い機会になった。

「雑誌の記事は、次々に出ては過去のものになる。けれども、絶滅危惧種の大変な状況は改善されていない。そこで僕は、もっと具体的に事態を変えるために、何ができるだろうって考えた」とサートーリさんは話す。

その答えは、地元のネブラスカ州リンカーンにある子供向けの動物園で、ハダカデバネズミを撮影していた時に見つかった。

動物園の台所で見つけた白いまな板を背景に、小さいハダカデバネズミを撮影してみたところ、スタジオ撮影のポートレート写真のような仕上がりになった。

「動物と目線を合わせて、動物以外の余計なものは何も入れずに、大きさが一定で、背景は白か黒のみの写真という動物写真はどうだろうかと思ったんです。ネズミもゾウも同じ大きさで、同じように素晴らしい動物として撮ったら。そうすれば大勢の人に、絶滅危惧種の悲惨な状況や絶滅の問題について、関心を持ってもらえるんじゃないかと」

妻の病状が改善するのに伴い、サートーリさんは自宅周辺のほかの動物園にも足を延ばして動物たちのポートレート写真を撮影するようになった。

動物園のスタッフも協力し、セットの準備を手伝ったり、背景を白や黒に塗っても大丈夫で餌が置ける部屋を提供した。

「動物たちは大抵ランチを食べにきただけだと思っているし、実際そうなんだけど、写真撮影もされているわけだ」

プロジェクトの規模が拡大するに伴い、ナショナル・ジオグラフィック誌の編集者たちが関心を持ち、サートーリさんにいくつかのシリーズ物を依頼した。例えば、両生類のシリーズや米国内の絶滅危惧種のシリーズといった具合に。

サートーリさんは、鳥やトカゲといった小動物の撮影に使う、さまざまな大きさのテントを持って世界中を旅行するようになった。大型動物については依然として、動物園内の安全な環境で撮影した。

「僕が撮る動物のほとんどは、生まれた時から飼われている。飼育員たちは、動物の機嫌を良く承知している」とサートーリさんは話す。「たまには、怒りっぽくて攻撃的な動物に巡り合うこともある。でも大方の撮影はすごくスムーズに進む」

サートーリさんはこれまでに、40カ国で6000種以上の動物を撮影した。プロジェクトには「ナショナル・ジオグラフィック 写真の箱舟」という名前が付き、動物たちのポートレート写真が同誌の表紙を飾るようになった。さらには、ニューヨークの国連本部やエンパイア・ステート・ビル、ローマのバチカンにあるサンピエトロ大聖堂の壁にプロジェクターで映し出されたこともある。

「写真の箱舟」で撮影された動物の一部は、絶滅が目前に迫っている。

サートーリさんは昨年、「タフィー」(訳注「Toughie=たくましい子」)と名付けられたカエルを撮影した。生存が確認できる最後の1匹とされたアマガエルだ。

タフィーは2005年にパナマで捕獲された。カエルにとって致死率が100%のツボかびの脅威からできるだけ多くの両生類を救うため、自然保護活動家が保護した。

米ジョージア州のアトランタ植物園に連れてこられたオスのタフィーは、メスたちと交配したが、オタマジャクシたちは一匹も生き延びず、メスもすべて死んでしまった。

タフィーも、サートーリさんが撮影して間もなく、9月に死亡した。

「人前で話す時は、いつも彼(タフィー)のことを話すことにしている。絶滅してしまったのを悲しむ代わりに、タフィーの物語を通じて、みんなに考えてもらいたいので」とサートーリさんは話す。

サートーリさんは、チェコでキタシロサイの最後の生き残りのうちの1頭を撮影したこともある。

「ぎりぎりのところで彼女に会えた」とサートーリさん。「ナビレ」と名付けられたメスのキタシロサイだ。

「とてもいいポートレート写真が撮れた後、撮影の終了時には彼女は横になって眠り始めていた。死期が近付いてからは、たくさん寝ていたというから」

ナビレは撮影から約1週間後に死んだ

米カリフォルニア州のサンディエゴ動物園でもう1頭のキタシロサイもなくなり、今や残るのは3頭のみ。3頭ともケニアで武装警備された環境で生きている。もう子どもを生むには歳を取り過ぎているが、体外受精によって、キタシロサイに近いサイの胎内で赤ちゃんを育てる取り組みが行われている。

「絶滅してしまっているのは小さな動物ばかりじゃない」とサートーリさんは話す。「残念ながら、大きいのもそうなんだ」。

サートーリさんは、最終的には1万2000種を撮影し、将来世代の財産にするのを目指している。そして、ほかの絶滅危惧種がタフィーやナビレと同じような運命を辿ることがないようにしたいと考えている。

「私が撮影した生き物たちのうち、少なくとも75~80%の種が絶滅を回避できる可能性がある。しかし、人々が彼らの存在をまず知らなくちゃいけないし、すごく好きになってもらって、どうやったら救えるか知ってもらう必要がある」

シロクマやトラのような大型動物が絶滅の危機にさらされているのはよく知られているものの、げっ歯類やカエル、コウモリといった小型の生き物が直面する状況は、十分に認知されていないとサートーリさんは言う。

「写真の箱舟プロジェクトの目標は、大きなものから小さなものまで、すべての生き物の存在の素晴らしさと、ほかの種がいなくなってしまうのだから我々人間だって分からないということを、人々に知ってもらうことだ」とサートーリさん。

「神の創造物をすべて見捨てず、存続させることで健康的な地球を保つのは、人類にとってもいいことだ」

All photographs by Joel Sartore/National Geographic Photo Ark

(英語記事 Joel Sartore: The man who takes studio photos of endangered species

提供元:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-38592027

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