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2017年1月20日

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米大統領選でドナルド・トランプ氏を支持した数百万人の有権者は、新大統領に何を求めているのか。選挙戦中に全米各地でトランプ支持者たちを取材したBBCのラジニ・バイディヤナザン記者が、いまあらためて何を期待するか尋ねてみた(文中敬称略)。


サラ・ジョー・レノルズ(25)、アーカンソー州

サラ・ジョーはアーカンソー州共和党の職員だ。昨年10月、2回目の大統領候補討論会の数日前に、同州リトルロックの事務所で取材した。

ドナルド・トランプが同州知事だったビル・クリントンの過去を選挙の争点にするつもりだと脅したことについて、州内のほかの女性共和党員は心配だと話していたが、サラ・ジョーは一貫してトランプ支持を貫いていた。

今でもそれは変わらない。就任式のため、ワシントン入りしている。

予備選の間は、仲間が全員、マーコ・ルビオ上院議員を応援していたので、自分ひとり「例外」だったと言う。

「私はみんなと一緒がいいというタイプの人間じゃないので。この人が一番だと、自分が思う人を応援したかった。勝ち馬を選んだと言えるでしょうね」

トランプがかつてテレビ番組の収録前に女性器を「わしづかみにする」と発言したことは、気にならなかった。

「誰にでも間違いはある。あんなことが撮影されたら、私だったらどうしていいかわからない」

サラ・ジョーにとってトランプの魅力は、変化を約束しているところと、実業家としての経歴。彼女が重視する課題は、税制改革やオバマケア撤廃とその代替策だ。

自分が応援してきた候補が、国の分断を癒してくれると期待している。

「自分に投票した人だけじゃなくて、アメリカ国民全員ひとり残らずのことを考えてくれますようにって、祈りまくってる。変化は一夜にしてならないけれど、就任から100日の間で、素晴らしいことが起きると思う」


ウィル・エストラーダ(33)、バージニア州

ウィル・エストラーダは、ワシントン・インサイダーそのものだ。弁護士で、ロビイストで、ルードン郡共和党の委員長だ。

昨年8月に会った時には、バージニア州の議員候補の一部が、党の大統領候補を推薦したくないと抵抗していた。

しかしウィルの忠誠心は決して揺らがなかった。就任式の招待客となった今、トランプが宣誓就任する様子を間近で目撃できることになった。

「国際舞台でまたアメリカが尊敬されるようにするため、トランプはすごい機会を手にしていると思う」とウィルは言う。

「トランプは予想を裏切るほどの現象だ。ルールブックをすっかり書き換えてしまった。見ているだけで興奮する」

ウィルには「交渉不可」な政策課題が2つある。オバマ大統領の医療改革撤廃と、空席のままの最高裁判事の席に保守派を選ぶことだ。

「建国の父たちの想定をはるかに越えて、政府が肥大化してしまった」。ウィルはオバマケアについてこれが問題だと指摘。トランプ氏が具体的な代替案を示していないことについては、「それでいい」と言う。

昨年夏のウィルはヒラリー・クリントンをさかんに批判していて、トランプ支持者の多くが「刑務所にぶち込め」と唱えるのに賛成していた。しかし今では、クリントン氏捜査に特別検察官を任命するという選挙中の公約を、新大統領が反故にしつつあるのは、理解できると言う。

「もし大統領がヒラリー・クリントンを追い込んでいったら、国はますます分断されたはずだ。僕は前に進みたい。クリントンたちは過去の遺物だ」


マーコ・グティーレス(43)、カリフォルニア州

私は昨年7月、オハイオ州で開かれた共和党全国党大会でマーコ・グティーレスに会った。その時彼は、「トランプ支持のラティーノたち」と書かれたプラカードを手にしていた。カリフォルニア州ディスカバリーベイの不動産投資家で、少数者コミュニティーにも支持を広げようとするトランプ陣営の「顔」のひとつになった。

メキシコとの国境に壁を造るというトランプの計画に、ヒスパニック系有権者の多くが激怒したが、マーコは違った。壁が障壁となって、麻薬や違法移民が国境を越えて来るのを止めるはずだと確信している。

「唯一気になるのは、罪のない家族を守るために移民当局がどうするかだ」

公然とトランプを支持したせいで、友人や顧客をいくらか失った。しかしメキシコ移民4世の妻は、応援してくれている。

1991年にメキシコから米国にやってきたとき、マーコはわずか17歳だった。両親は何年も前から夏になるとアメリカで農作業をする出稼ぎ労働者だった。ロナルド・レーガン政権の移民政策変更によって、家族は合法移民の地位を与えられた。

「この国に来たとき、持っていたのはポケットの75セントと、ジーンズと白いTシャツ。それだけだった」とマーコは言う。「それが、アメリカ合衆国での僕の新しい人生の始まりだった」。

恩赦によって自分は合法移民となれたものの、今のマーコは移民法の強化が必要だと考えている。

「トランプは強力な結果主義者で、今のところ、結果を出していると僕は思う。座って問題について話し合う用意がある人だ。3月までには、彼が変化を実現してるかどうか判断できるはずだと思う。まずはチャンスを与えないと」


ビル・ハートマン(59)、ミシガン州

建築修理業を経営するビル・ハートマンに会ったのは、昨年3月のことだ。ミシガン州予備選に向けてデトロイトで、庭に立てるトランプ支持看板を配っていた。

「アメリカをまた偉大にしたいと言った候補は、トランプだけだった。僕はそこが気に入ったんだ」

投票日の夜にクリントン支持者たちが涙にくれている姿を見て、ビルは2008年にバラク・オバマが当選した時のことを思い出した。あの時の自分の悲しみがよみがえってきたという。

「すごく共感できた」

就任式当日、ビルはワシントンには行かないが、地元会場の大画面で他の支持者たちと式典を見守る予定だ。

「アメリカを尊敬する人がいなくなったと思う。特にバラク・オバマが世界のあちこちに行って、ほかの指導者たちの前でお辞儀をしまくったせいで。ドナルド・トランプは世界の新秩序に参加しようなど思っていない。アメリカの独立を望んでいる」

こう言うビルは、実業家としての経験が新しい外交アプローチを生み出してくれると期待している。

「外国との契約や合意で、上手に交渉できるはずだ。相手が誰だろうといつでも、話し合う用意があるみたいだし」


ジューン・サベッジ(49)、フロリダ州

フロリダ州マイアミのトランプ支持集会で、ジューン・サベッジはとても目立っていた。山高帽と赤いブーツ姿の彼女は星条旗で体をくるみ、「トランプ支持の女性たち」と書かれたプラカードを手にしていた。

「ミス・マイアミ」美人コンテストの最選考まで残ったことのあるサベッジは、物心ついたころからの共和党支持者で、不動産業で働いている。トランプを支持したのは、政界のアウトサイダーだったからだ。

「弁護士出身の大統領はもうだめ。実際に何かを造ったことがある人、人を雇ってクビにしたことがある人、億万長者の国家元首たちに立ち向かえる人じゃないと」

新大統領には会ったことがある。ストレートな物言いは長所だと考えている。

「ずけずけと言いたい放題する人だけど、みんはそれは承知してる。色々なことを言うから、気に入る人もいれば気に入らない人もいるかもしれない」

ソーシャルメディア中毒なのは気になるが、近ごろは誰もが似たようなものだからとジューンは言う。

そしてジューンにとって、トランプ政権最大の長所の一つが、前インディアナ州知事のマイク・ペンス副大統領だ。

「良い男の後ろには必ず良い女がいると、よく言われる。マイク・ペンスを女呼ばわりするつもりはないけど、この『結婚』では間違いなく彼が女役。だから、とても強い男、つまりペンスが、トランプの後ろにいるというわけ」


マーサ・レーナー(75)、テキサス州

マーサは元教師で、テキサス州のトランプ選挙運動でボランティアとして働いていた。私は昨年2月、ヒューストンで開かれた共和党予備選討論会を大勢で見る、パブリックビューイングの会場で彼女と会った。

アルゼンチン出身のマーサは30年近く前にアメリカにやってきた。米・メキシコ国境に壁を造るのは、良いアイディアだと評価している。

ワシントンの既得権益を追い出すという「沼をさらえ」スローガンをはじめ、違法移民取締や安全保障強化など、選挙中の公約を守ってもらいたいとマーサは期待している。

新大統領に伝えたいアドバイスもある。何を言われてもそんなに気にするなと。

「今はマスコミの人たちが何か否定的なことを言うたびに、バッとそれに反応しているみたいだけど、そんなのはただ無視した方がいい」


キャシー・デグラツィア(56)、マサチューセッツ州

マサチューセッツ州で人口1万1000人の町に住むキャシーは、この町のトランプ支持者は自分だけかもしれないと笑う。最初に会った時の彼女は、投票日に向けて隣のニューハンプシャー州でトランプ応援活動を続けていた。

自分は年を取ると共に保守的になったけれども、社会的テーマでは今でもリベラルだとキャシーは言う。ただ、両党の政治家に辟易としていたのだ。

トランプには、国をまたひとつにまとめて欲しいと期待している。前より色々とひどくなったのはオバマ大統領のせいだと考えている。

「自分が生まれてこの方、これほど人種の分断がひどかった時代は記憶にない。今までの政権のせいで、こんなにひどくなったんだと思う」

とはいえ、トランプに投票すると決心したのは、経済政策が理由だった。キャシーの父親は1980年代、ニューヨーク北部に織物工場を持っていた。

「アメリカのような人権基準がない国と貿易協定を結んだせいで、製造費が下がって、アメリカの労働者と不平等に競争するようになった」

選挙運動をするなかで、機会や権利を失ったと感じる多くの有権者が同じことを言うのをキャシーは耳にした。

「自分たちの仕事がどんどんなくなって、政府は自分たちの言うことを何も聞いてくれない、自分たちの状況は確実にひどくなったと、大勢が感じていた」

トランプ政権が取り組むべき課題としてキャシーはほかに、安全保障と医療と軍事を重視している。

そして気候変動も確かに気になるが、「絵に描いた餅のような協定」で前に進むべきではないと考えている。

それよりも、アメリカの自動車の燃費をもっと効率よくする努力が必要だとキャシーは言う。

「世界全体にあれこれ命令し始める前に、まず自分たちの家の中をなんとかしないと」

(英語記事 Trump inauguration: What the president's supporters want

提供元:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-38686876

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