BBC News

2017年1月24日

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ルーシー・フッカー、ラッセル・ホッテン両記者

「米国を偉大にする」ため、すぐ仕事に取り掛かると表明していたドナルド・トランプ米大統領は、今週20日に就任した直後から、バラク・オバマ前大統領の政権を代表する医療保険制度改革(オバマケア)を含む一部政策の巻き戻しに着手している。

そのため今後、経済政策の変更が矢継ぎ早に打ち出される可能性は十分ある。

選挙中に激しい調子で諸々主張していたトランプ氏が、ホワイトハウスの大統領執務室の主となった今、どんなことが予想されるのだろうか。

規制緩和

就任式が終わるか終わらないかのうち、ラインス・プリーバス大統領首席補佐官は、連邦政府による新たな規制導入にストップをかけた。お役所仕事を減らす大胆な対応のようにみえるし、トランプ氏は選挙運動中も企業に対する規制の負担を減らすと約束していた。

しかし実際は、新たに政権入りする大統領がすることとしては珍しくない。

トランプ氏の対応で最も議論を呼んでいるのは、オバマ前大統領の医療保険制度改革に関する規制の部分だ。保険に加入している個人や、民間の保険会社にとってどのようなことを意味するかまだ明確でないが、新大統領はオバマケアを「撤廃し、別の制度に取り換える」としていた。

ストップがかかったほかの規制も「再検討」される。しかし、それだけではなさそうだ。トランプ氏が商務長官に指名したウィルバー・ロス氏は昨年、規制緩和によって企業は年間2000億ドル(約22兆6500億円)費用を削減できると述べていた。ロス氏は、健康と安全、石炭産業で規制緩和が必要だとしていた。

貿易

トランプ大統領がこれは明確に打ち出したと言える主張があるとするなら、現在の貿易協定が「この国で汗水たらして働く人々よりも、権力のインサイダーやワシントンのエリートたちを優先している」という部分がそれだ。一新されたホワイトハウスのウェブサイトにもそう書いてある。

トランプ氏は22日、カナダ、メキシコ両首脳との北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉が近く始まると語った。NAFTAは1994年に発効している。

トランプ氏は、メキシコのエンリケ・ペニャニエト大統領とは移民や国境管理についても話し合うと表明した。メキシコとの国境に壁を建設するという選挙公約に沿う発言だ。

環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱についても今週、具体的な動きが始まりそうだ(訳注:この英語記事掲載後の23日、トランプ氏はTPP離脱に関する大統領令に署名した)。

TPPは、日本から南米チリまで、太平洋に面する国々との何年にもわたる交渉から生まれた。中国の台頭に対抗しようと、オバマ前大統領が打ち出したアジア重視政策の一環だった。

大手金融機関

米国の大手金融機関は、大統領選後の数カ月を大いに楽しんだ。銀行業界は規制緩和に期待を寄せる業界の一つだ。

財務長官に指名されたスティーブン・ムニューチン氏は、2008年の金融危機後に成立した、大手金融機関を対象とした金融規制改革法「ドッド・フランク法」を緩和すると約束している。これはウォール街にとって利益拡大の機会になるかもしれない。

ムニューチン氏の指名はまだ上院で承認されておらず、規制の緩和には時間がかかる可能性がある。しかし、銀行経営者らはすでにトランプ政権下での見通しについて楽観的な口調になっている。

より目先でも、トランプ政権が発足した数時間後には、政権交代の直前に前政権がとっていた、何百万人もの住宅購入者を対象にしたローンの支払いを軽減する措置を停止した。

エネルギーとインフラ

ホワイトハウスのウェブサイトで、「最重要課題」の冒頭に掲げられているのは、「米国第一のエネルギー計画」だ。トランプ氏はシェール・オイルや天然ガスの埋蔵資源の開発を主張しているほか、「苦境にある」炭鉱業界を再興するとしている。

トランプ氏はシェール開発から得られる税収増を、道路や学校、橋などへのインフラ投資に充てるとしている。

ホワイトハウスの新しいウェブサイトでは、オバマ政権の主要な政策課題だった気候変動についての言及は消えている。

環境には触れられている。環境保護局(EPA)は今後、「我々の空気と水を守るという基本的な使命」に力を入れるという。

雇用と経済成長

ホワイトハウスの新しい公式サイトは、雇用と経済成長について現状は悲惨だと書いている。製造業から雇用が消え、2008年以降の景気回復は「遅々としている」と指摘する。その一方で、トランプ氏には米国に2500万人の雇用を創出し、年率4%の経済成長を実現する「大胆な計画」があると書いている。

その方策として挙げられているのは、法人税を含む幅広い税率の引き下げだ。減税の財源については明確でない。

「恐れそのもの」

新政権は、米国にとって大改革が喫緊の課題だとしており、トランプ氏も就任演説で、「アメリカ内部の殺戮(さつりく)」と表現する、貧困から抜け出せずにいる人々や、「墓石のように散らばる、さび付いた工場」に言及しているが、実際は、経済情勢は全体としてかなり良好だと考えられている。

雇用は6年3カ月にわたって増加しているし、公式の失業率は4.7%で、経済成長率も堅調に推移している。

投資家たちはこれまでのところ、否定的な心理が最も危険だというトランプ氏のキャッチフレーズを念頭に置いているようだ。

トランプ氏の当選後、上昇してきた株価は現在、踊り場状態で、市場参加者たちは次の材料を待っている。これは鼻であしらうべきでないだろう。急進的な計画を持つ新しい大統領にとって、前向きな期待は大きな政治的資産だからだ。

(英語記事 Trump's economic plans: What do we know so far?

提供元:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-38717326

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