オトナの教養 週末の一冊

2017年1月28日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。福島支局、立川支局、経済部、政治部、ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスクを経て2014年より現職。著書に『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』『御社の寿命』、(いずれも中央公論新社)など

 世の中の多くの仕事は、一人の力では完結することができない。ものづくりで言えば、複雑な工業製品になればなるほどそうである。アイデアを形にしてゆくためには多くの人との関わりがあり、それゆえに様々な意見の対立が生まれる場合もある。そうした中で大切になってくるのがコミュニケーションである。他者といかにうまく意思疎通を図っていい仕事につなげていけばいいのか。そのポイントを体験的に記したのが本書『アイデアは敵の中にある』である。著者の根津孝太さんに執筆の動機などを聞いた。

――本書では、ものづくりにおけるコミュニケーションの大切さを一貫して訴えておられます。根津さんがその重要性を感じたのはいつですか。

根津:トヨタ自動車時代に、「愛・地球博」のコンセプト開発リーダーを務めた時です。「愛・地球博」は2005年でしたが、企画自体は02年からあり、いろいろな人々と関わりながら取り組んでいました。自動車のように関係する人が多いプロダクトの場合、プロセスの途中での意見対立などは避けられません。そうした中でも後ろを向かずに、どう前を向き続けるのか。それを強く意識したのが「愛・地球博」でした。

――印象的なエピソードとして、会議で慎重な意見を言い続ける「寺田さん」という方がいて、ある時に顧客のクレームを処理する部門に長く所属していた経歴を持つ人だとわかった。製品を世の中に出した時に顧客にどんな影響があり、どんなリアクションがあるのか。そこまで深く意識していたからこその発言だったと気付いて、それからは会議が進むようになったと書いてあります。ここで気付いたことはやはり大きかったのでしょうか。

根津:とても大きかったですね。私自身も気付けて良かったと思いました。例えば、自分が何か意見を言われてムッとするということは、それだけ相手の中に自分にはない価値を秘めているということです。当たり前のことですが、相手が自分の中にないものを持っているからこそ、ムッとするのだと思うのです。それと同時に、自分が痛い所を突かれているからではないか、ということも気付きました。寺田さんのエピソードも、その経歴を途中で知ったことで、あの意見はそうした理由から、あるいは寺田さんの経験した背景事情から発せられているのだ、ということが頭の中でつながったのですね。私が周囲の人にも紹介したので、みんななるほどと納得して共通認識になりました。

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