オトナの教養 週末の一冊

2017年1月28日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

ジャーナリスト

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など

――本書は、根津さんのご経験やデザインの実績のご紹介のみならず、コミュニケーションの重要性を問いています。実際、この本はコミュニケーションの本ですね。

根津:そのとおりです。それを抽象的に言ってもなかなか伝わらない。編集者の方や妻とも議論して、自分の経験をもとにした方がわかりやすいという点に考えがいたりました。エピソードとして考察した話は、自分の経験ですけれども、自分自身が十分抽出しきれていなかった。でも自分が大事にしていたことはこういうことだったのだということが編集者や妻との議論でだんだんわかってきた。自分が何気なくぼんやりと思っていたことが言葉になっているのは、こうした議論の中から引き出してもらったものだと思っています。

――参加したバイクのトークショーで、バイクの作り方をめぐって聴衆がやや感情的な質問を投げかけた時に、相手とコミュニケーションしながら上手く対話されている場面が本書で紹介されています。

根津:質問をする方も緊張していたはずですが、それだけのエネルギーをもって向かってきてくださり、コミュニケーションの発端を作ってくれたことに感謝しました。そしてそこまでして言ってくれるのだから自分も答えるべき責任はあるとも思いました。それで、ご質問の内容はこういう意味ですか、と逆に質問しながらコミュニケーションを深めてゆきました。そうすると相手の言いたいことはこういうことなのかとだんだんわかってきて対話が楽しくなってゆき、友達になれそうな気にもなりました。

 こうした経験のある種の「ひな形」は、寺田さんとのコミュニケーションに見いだすことができます。あの時ぼんやりと考えていたことが経験を重ねるごとに、「これはチャンスだ」と確実に思えるようになりました。何か一見、嫌なことを言われた時にも「チャンスだ」と思えるまでの時間がどんどん短くなってゆきました。

――自分と他人のデフォルト(当たり前だと思っていること)は違うという指摘も印象的でした。

根津:例えば自動車メーカーでは、トヨタと日産で同じ物を指す名前が違っていたりします。本当はそれは非常に表面的なことなのですが、そこでつまずいて相手が困惑してしまったら、そこから先は話を聞いてくれなくなります。相手を見れば話を聞いてくれているのか、あるいは上の空でいるのかはすぐわかりますね。コミュニケーションは相手のことを感じて話すのが基本だと思っていますが、デフォルトみたいなものは常にあるのだという思いでいると、「相手がわかっていないな」と思った時の巻き戻しも早くなりますね。

――本書を読み進めてゆくにつれ、自然とこの本とコミュニケーションした気になりました。

根津:あえてビジネス書の形式にせず、読み物の形にして良かったと思っています。最初は少し我慢が必要かもしれませんが、そこからコミュニケーションの世界に入っていける本として読んでいただけるとありがたいと思います。

  
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