2024年4月20日(土)

普天間問題特別鼎談

2010年4月29日

リチャード・ローレス:2006年の「防衛政策見直し協議(Defense Policy Review Initiative)」というものは、始まったのが2003年でした。狙いとしたのは、米日同盟関係をより戦略的で、かつ運用面で実質のあるものに進化させようとすることでした。

 何本もの合意が生まれ、共通戦略目標ですとか、役割と任務についての合意ですとか、基地の共同使用や、弾道ミサイル防衛における協力、そして基地と兵力の再編などがアグリーされた。で、いま言った基地・兵力再編の一環として、両国は普天間海兵隊航空基地を閉鎖し、海兵隊から8000人をその家族とともにグアムへ移すとともに、残余の海兵隊は日本国内で移転させるという合意に至ったわけです。

 長期にわたる検討を種々重ねた結果、両国政府は結局、沖縄に残る海兵隊を、キャンプ・シュワブを広げてそこへ持っていくことにしました。問題の場所は、沖縄でいくらか人口稠密度の低いところです。またこの基地再編合意により、日本政府は費用のうち60億ドル以上を負担することに合意しています。

マーブル:その普天間問題が、なぜ両国間緊張の原因になっているのですか。

マイク・フィネガン:普天間を閉鎖し、海兵隊をキャンプ・シュワブとグアムへ移転するというこの合意ですが、今のところほとんど実施に移されていないわけです。

 沖縄県の前知事と、キャンプ・シュワブがある市の前の市長は、2人とも計画推進派でした。とはいえ沖縄には強い反対論があって、沖縄に、ともかく米軍を置いておきたくない、どんなものであれ反対だという声には強固なものがあります。

 こんな抵抗が生まれた一因は、先には自民党、今は民主党が率いる日本政府が、計画の必要性についてきちんと説明できずにきていることと、所要の予算を確保しないまま今日に至ったところにあります。つまり日本政府には、普天間に関して、計画通りやりぬくことを渋るところがある。

 そこから、米日両国が果たして2006年合意の全体を実行できるか否か、その能力に疑問符がつくということになってしまうわけです。

 要するに、普天間の失敗は普天間だけに留まらない。米軍再編にまつわるすべての合意に関わってくる。本質的にどの合意も、お互い分かちがたく結び合っているわけですから。

ローレス:ここは決定的なポイントなので、ちょっと付け加えたいと思います。米国の考えるところ、日本にこれだけは維持しておきたいと信じる軍事力のレベルというものがあります。同盟上の義務をきちんと履行するため、これだけは、という能力のことです。

 2006年の合意はいろいろあるが、全体として眺めると、まさしくこの基礎的な軍事力をもたらすようにできている。それゆえ、基地移設の約束事はどれもこれもお互い関係しあっているのであって、全部が一体として履行されたとき、初めて米国は同盟全体の信頼度を保持し、かつ強化していくことができるようになっている。

マーブル:それじゃあ現在の米日関係を少し広い角度で眺めてみるとして、普天間問題というのは、2人の友人間に起きたちょっとした誤解といった類のものなのか、それとも深刻な危機で、両国関係に根底的な変化をもたらしかねないものなのか。そこはどうでしょう。


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