足立倫行のプレミアムエッセイ

2017年1月31日

»著者プロフィール
閉じる

足立倫行 (あだち・のりゆき)

ノンフィクションライター

早大政経学部中退後、週刊誌記者などを経てノンフィクション作家に。近著に『血脈の日本古代史』(ベスト新書)『倭人伝、古事記の正体』(朝日新書)。

 「ヒト」の皮膚の上には約1兆個の常在菌がいるし、各細胞内でエネルギー生産を担うミトコンドリアはもともと外部にあった細胞。ヒトゲノム中の約半分はウイルスや転移因子が占めており、かつてはジャンク(がらくた)DNAと呼ばれていたが、実は遺伝子発現の制御などに関わることがわかってきた。

 ということは、生物としての「ヒト」は、脳情報が考える「人」ほど、実際は「個体」として独立していない、とも言える。

 従来、生物進化を図として説明する「生命の樹」は、単細胞から高等動・植物などへと続く2 次元の樹木状のものだった。ところが、2011年発表のそれは、横方向に絡み合い、網のように複雑化した3次元状の樹木になっている。大きな違いは、異なる生物同士が、同時代の他種生物と遺伝子の「水平移行」を行い、その「水平移行」が生物進化に深く関わっていることが明らかになったことだ。

 中屋敷さんは、生命は本来、さまざまなレベルで生き物同士がつながったもの、と言う。物質的には完全な「独立」などなく、進化の中で他の生物と合体や遺伝子交換を繰り返しながら、ごった煮的に育ってきた、と。

 40億年ほど前に、自己複製と自己変異を可能とする分子装置の成立と共に始まった「生命」という現象は、地球上で一つながりの「生命の輪」のように、大河のごとく今も流れ続けている。異なって見える各生物の姿は、その時々の環境に応じた生命原理の具現化なのだ。

 それでは、脳情報からなる、現在の我々の「人」としての「生」はどう理解すればいいのか?

 中屋敷さんは、一部の生物だけが持つ特殊な「生」、「生命」という大河の流れに浮かぶ小舟の上で見る夢かもしれない、と記すのだが……。

 この生物学的人間像、あなたは気にならないだろうか?

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る