2024年4月20日(土)

家電口論

2017年2月8日

ドライクリーニングは万能のクリーニング法ではない

 衣服ケアは、大きく2つに分かれる。家庭内で行われるいわゆる家事としての洗濯。そして、プロにお金を払って依託するクリーニングだ。今回の洗濯表示の改訂で、クリーニング表示は大きく変わった。今までの「ドライクリーニング」に「ウェットクリーニング」が加わったのだ。

 ご承知の通り、ドライクリーニングは、皮脂、口紅など、油溶性の汚れには効果の高いクリーニング法であるのだが、汚れとして多数を占める汗シミ、コーヒー、ジュース、血液といった水溶性の汚れは落ちにくい。が、油溶性の汚れを家庭で落とすのは至難の業。今までのドライクリーニングは、主に汚れが落ちればという視点で重宝されてきた。

 今回の、ウェットクリーニングの追加は、それに対してどのようなポジションなのだろうか?
水洗いという意味では、クリーニング屋の目玉商品であるワイシャツのクリーニングは、水洗いである。しかし、これはウェットクリーニングとは言わない。ジャブジャブ洗っても伸び縮みがほとんどなく、型崩れもないからだ。

 ちなみにドライクリーニングの場合も、ほとんど型崩れはしない。それはドライクリーニングで使用する溶剤が、繊維に浸透しても繊維が膨潤しないからだ。

 それに対し、JIS(日本工業標準)規格ではウェットクリーニングを「特殊な技術を用いた業者による繊維製品の水洗い処理」と定義づけている。ほとんどの繊維は、水につけると伸び縮みするため、型崩れするからだ。また服を染める染料が溶け出し、風合いが変わることもしばしば。ジーンズは、この風合いの変化を楽しむファッションだが、これは例外。

 現在ファッションには、昔からは考えられないような素材が使われることが多い。ポイント的なファー使いなどは典型。しかも樹脂などでつけられていたりする。その場合、ドライクリーニングだと修復不可能になることがある。このような洗濯物に用いられるのがウェットクリーニングだ。

 洗濯教室取材時に「ドライクリーニングを断られました。どう洗えばいいでしょうか?」というシーンを何度も見た。その度に、手洗いで対応したのだが、問題は仕上げ(アイロン掛け)。さすがに、洗濯教室の先生ともなれば、さっさと掛けていきます。ポイントはスチーム。熱、重さ、力でなく、スチームがポイントなのだ。当然、アイロンをかえるタッチもソフト。生徒さんの方はと見ると、頑張っていることは伝わってくるのだが、力が入りすぎ、アイロンを使っているのではなくアイロンに使われている感じ。勢い立体裁断の服も扁平に……。簡単ではないのである。

 さらに環境問題も視野に入れて欲しい。ドライクリーニングで使われる溶剤と、ウェットクリーニングで使われる水。水の方が環境にやさしいのは言うまでもない。


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