WEDGE REPORT

2017年2月7日

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 豊洲市場の地下水のモニタリング調査で環境基準の79倍のベンゼンが検出され、再調査がはじまった。揺れる築地市場の移転問題をどう考えるべきなのか。築地市場を25年以上取材し、場内の事情に精通している時事通信社・水産部長の川本大吾さんに聞いた。

業者は11月にも移転と期待していた

時事通信社水産部長・川本大吾さん(49)

 盛り土がされず、暫定値とはいえ地下水の汚染が環境基準を上回っていた問題。真相は闇の中ですが、複数の人間が何年もの間に積み重ねてきたことのしわ寄せが、今一気に来ているんだと思います。

 9回目のモニタリング調査は会社を変えて調べた結果、これまでと全く違う数値が出た。8回までとの差がありすぎて、どう考えてもおかしい。土壌改善なんて相場が分からないわけですよ。これだけやるべきことをやってなかったとなると、金の使い方がずさんだった可能性の方が高い。盛り土の問題にしろ、小池百合子都知事が就任したからばれてしまったのであって、都の役人としてはこのまま押し通せる、なんとかなると考えていたとも考えられる。

 土壌改善をする前の2008年には、基準の4万3000倍のベンゼンが検出された。でも無害化ができるとずいぶん前向きに土壌汚染対策がスタートした経緯があります。豊洲はもともと2014年に開場予定でしたが、安全性の確認のためにとさらに開場を延ばした。都が10年間で800億円以上をかけるのだから、できるのだと築地の業者は信じて待ったのに、こんなことになっては納得できない。

 今後どうなるかは全く不透明で、築地は混乱の渦中にあります。最終モニタリング調査の結果に問題がなければ、夏にも移転を判断して、早ければ今年の12月には移転する可能性がありました。12月はお歳暮や年明けの準備で忙しいから、前倒しして11月に移転したいと、話していた業者もいました。

業者はあきらめムード

 市場の管理者である都が業者をずいぶん裏切ってきたわけですから、完全に崩れてしまった信頼関係をもとに戻すのは難しいですね。業者の間ではもう豊洲は無理だという空気が流れています。風評被害は続くし、都が汚染をきれいにすると言ったとしても、これまでの経緯から疑いは晴れません。調査の結果を受けて、専門家会議では地下水だから上の市場には問題ないという意見も出ていましたが、都はずっとそういう考えでやってきたのではないかと思ってしまいますね。

 2001年に豊洲への移転が決まったタイミングで、中央卸売市場長や中央卸売市場の幹部が皆都庁に行ってしまったんです。それほど権限のない人間だけが残って、管理部門はすべて都庁に移ってしまった。築地の市場長は部長級で、局長級の中央卸売市場長とは全く立場が違います。だから、業者の団体の代表も、都の幹部と細かいやりとりができなくなってしまったんです。

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