2024年4月17日(水)

Wedge REPORT

2017年2月7日

 一方の豊洲では、勝手に建設をどんどん進める。業界に対する説明がほとんどされないまま、移転の準備が進んできたんです。この1、2年で説明がなされるようになってきて、豊洲の店舗は狭くてマグロを切る包丁が使えないなんていう話が出てきた。豊洲に決まってから10年以上、業界になかなか情報が伝わらない状態だったんです。

都職員は市場流通に疎い

川本大吾(かわもと だいご)。1991(平成3)年、専修大学経済学部卒業。時事通信社に入社。水産部に配属後、東京・築地市場で市況情報などを配信。水産庁や東京都の市場当局、水産関係団体などを担当。2006-07年水産週報(現・水産社発行)編集長。2010-11年水産庁の漁業多角化検討会委員。2014年7月に水産部長に就任。著書に『ザ・築地』(時事通信社)など。

 築地市場にも職員がいて、取引のルールを守っているか、施設などに不備が生じていないかといった管理業務に当たっています。しかし、魚流通の現状などについては、業者と比べて当然理解度が低い。市場内で今、どこの産地のどの種類の魚が、どのような傾向で流通していて、先行きどのような見通しなのか、例年と比べ高いのか安いのか、売り買いする市場関係者とは、比較にならないくらい理解度は低い。つまり一緒に市場で働いていても、あまり身近な存在ではないんですね。

 都は市場の開設者ですが、特に幹部が都庁に行ってしまってからは、業界と一緒になって何かやろうとしても、近い距離感ではできなくなりましたね。一緒に市場を盛り上げていこうという気持ちも薄れているのではないかと感じます。

 結局、見えないところで10年以上建設が行われ、土壌の改善が行われて、しかも延期して、これだけ入念にやってくれているんだなと安心させ……最後にこの結果です。今回だって、小池都知事にならなければ、豊洲市場が開場してからマイナスの情報が出ても表ざたになったとは限らない。移転反対派の業者が騒いで、週刊誌で少し報道されるという、その程度でしかなかったかもしれないですよね。

 再調査の結果、安全基準をクリアできないと、中央卸売市場を管理する国の許可が得られない可能性があります。だから移転できるかどうかは小池都知事の一存とはならない。今後の展開がまったく見えない状況です。


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