2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年2月13日

 トランプがNATOを壊しかねない、またはNATOから脱退しかねない、との危機感をもって書かれた社説です。

 しかし、いくら何でもそういうことにはならないでしょう。閣僚に指名された人で、そういうことを主張している人はいません。トランプといえども、自分が指名した閣僚が猛反対する政策を打ち出していくことには躊躇すると思われます。

単純な事実誤認

 トランプという人は、物事の軽重や関連についての判断が極めて悪い人ではないかと考えられます。たとえば、対ロ制裁緩和と米ロでの核兵器削減交渉を絡めて、核削減を目指すようなことを言っていましたが、そのような取引が成立するわけがありません。NATOについても、「加盟国が国防費増について約束したことを守っていないから時代遅れである」と言いましたが、NATOが時代遅れであることと、加盟国の中に十分な防衛予算を確保できない国があることとは別の問題です。NATOはテロと戦っていないなどというのは、単純な事実誤認です。

 トランプ内閣の閣僚の承認公聴会で明らかになったことは、大統領と閣僚候補の間にある相当大きな考え方の違いと、それを調整する努力の驚くべき欠如です。たとえば、ティラーソン国務長官は、ロシアについてトランプと話し合ったことはないと証言しました。トランプとティラーソンのロシアに対する態度についての疑念がずっと出ている中で、これは驚くべきことです。こんなことで新政権はきちんと機能するのか、心配になります。

 なお、米国であれ、欧州であれ、選挙にロシアが介入して、選挙結果を変えるなどは至難の業であり、こんなことでの大騒ぎはもうやめたらどうかと思います。民主主義は外国の情報機関工作で壊されるようなものではありませんし、工作にそういう力があると考えない方が良いでしょう。

  
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