海野素央の Love Trumps Hate

2017年2月10日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

ゴルフ外交は日本側にプラスかマイナスか

 トランプ政権は民主主義に基づいて選ばれた政権であり、親交を深めるのは当然だという見方があります。だた、以下のマイナス要因も踏まえてトランプ大統領にアプローチをかける必要があります。

 第1に、安倍・トランプ両氏の意識の隔たりです。安倍首相は信頼関係の構築の重要性を繰り返し述べています。同首相は人間関係志向のアプローチをとっています。一方、トランプ大統領は同首相が自分のパートナーになるだろうと述べながらも、取引を通じて白人労働者のための雇用創出という課題達成志向が極めて強い点は看過できません。信頼関係の構築を目指してゴルフをする安倍首相と、取引の場としてホワイトハウスではなくゴルフ場を選択したトランプ大統領との間には意識の隔たりが存在しています。

 第2に、日米首脳会談のタイミングです。今回の会談はイスラム圏7カ国からの一時的米国入国禁止に関する大統領令を巡る連邦控訴裁判所の判断と重なりました。トランプ政権の主張が退けられました。米国社会に大混乱を招いた大統領とツーショットの写真や映像が全米並びに全世界に流れるのはプラスにならないことは明白です。

 トランプ大統領は、連邦控訴裁判所の判決に対するダメージコントロールを、安倍首相を利用して行うでしょう。まず、2人でゴルフをしながら、余裕のあるジェスチャーを見せると同時に、司法にも立ち向かう強いリーダーを演出します。次に、白人労働者の雇用創出のために同首相と交渉を行っていることや成果をアピールします。さらに、上訴して最高裁で戦うことを表明するかもしれません。いずれにせよ、今回の日米首脳会談は、連邦控訴裁判所の判決のダメージコントロールの場になると言えるでしょう。

 第3のゴルフ外交のマイナス要因を挙げてみましょう。トランプ大統領がヒスパニック系及びアフリカ系から人種差別者であると認識されている点です。2016年米大統領選挙において研究の一環としてクリントン陣営に入り中西部アイオワ州及び東部ニューハンプシャー州などで3300軒以上の戸別訪問を実施しました。同陣営が標的としていたヒスパニック系並びにアフリカ系はもちろん、サンダース支持者の若者もトランプ候補(当時)の人種差別的な言動に強く反対していました。

 従って、トランプループの中に自ら入って行くゴルフ外交は、マイナス要因ないしリスク要因が少なくないと言わざるを得ません。

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