したたか者の流儀

2017年2月18日

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パスカル・ヤン (Pascal Yan)

著述家

著述家。ルーヴァン・カトリック大学大学院中退(ベルギー)。証券マンとして25年間、欧州を中心に海外で過ごす。現在の職業は都内大学教授。

 

・俺の親父は左官だった。
・へえ、中佐とか、大佐とか?
・偉いんだ。俺の親父、だいとうりょうだぞ。
・え? 大工の棟梁さ。
・俺の方も、軍隊ではなく壁を塗る方だった。

 かつては、大統領といえばドゴールやケネディー。首相と言えば、チャーチル、フルシチョフ、周恩来。どこに座っても絵になった。大工の棟梁ではなくとも、不動産屋の親父的な大統領が出て、今後の政治風景ががらりと変わってきたという論調が多い。これは最近の現象と思われているが違う。

(iStock)
 

 2007年5月にニコラ・サルコジが大統領になったときに気づくべきであった。フランスでは問題にする人はいないが、日本では驚きとともに、その出自が語られた。現地フランスでは、今日「歯を磨くの忘れた」と同じくらい重要性のないことなのだ。

 もっと重要なのは、彼の言動や行動にあった。

 まず、女性関係。今のドイツの成功はゲアハルト・シュレーダー首相の準備によることも多い。左翼社会民主党党首として、逆に厳しい労働改革をおこなった。首相は父親を知らない。生後すぐの時期にソ連との戦闘で死んでいるそうだ。労働者の子として苦学して首相にまでなった。彼は四回結婚している。実子はない。ドイツ語経由なのでエピソードは日本まで届かないが、かなりはじけたこともあったと聞いた。学歴身分の厳しいドイツで小学校出から、実力試験で一つ一つ這い上がって、日本の東北大学にあたる名門ゲッチンゲン大学から司法試験に合格するまでの努力たるや頭が下がる思いがする。

 シュレーダーには及ばないが、正式結婚を三回しているのがフランスのニコラ・サルコジだ。最初はコルシカの薬局の娘と普通に結婚していた。後にパリの小さな町の市長時代、職務での結婚の誓いを受けた際に、一目惚れしてその女性と略奪結婚してしまった。これが二度目だ。その女性とは大統領当選まではどうにかなったが、米国でブッシュ父に当選祝いのランチに招待されたときに、サルコジ夫人は「NO SHOW」で話題となった。結局不仲は事実で、大統領就任後正式に離婚となった。その際、夫人はボーイフレンドとベニス沖をヨットで遊んでいたと、フランスのゴシップ誌は書いていた。

 サルコジの離婚は、第五共和政下の大統領は自然人であるのか、という議論が起きて離婚不能の事態も想定されたが無事離婚は成立した。

 大国のトップはカップルで動くことが多く、有名モデルで人気歌手のカルラ・ブルーニーを娶って子までつくってしまった。美人カルラも大統領夫人の居心地は悪いはずもなく、もう一期やりたかったであろう。本来、カルラはフランス的左派で、ミッテラン時代に三十代で首相を務めたロラン・ファビウスと浮き名を流していた。

 そんなこんなは、トランプより整然としたものであるかもしれないが、その言動のひどさは、トランプ以上かもしれない。エリゼ宮に米国メデイアが取材に入ったとき不快なことがあったのか、まだ録音機が回っているうちに、「どこの間抜けだ、こんなバカを連れ込んだのは」と、フランス語での発言が集録されてしまったこともある。

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