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2017年2月17日

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小泉悠 (こいずみ・ゆう)

財団法人未来工学研究所客員研究員

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間企業を経た後、2008年から未来工学研究所。09年には外務省国際情報統括官組織で専門分析員を兼任。10年、日露青年交流センターの若手研究者等派遣フェローシップによってモスクワの世界経済・国際関係研究所(IMEMO)に留学。専門は、ロシアの軍事・安全保障政策、軍需産業政策など。著書に軍事大国ロシア』(作品社)、『プーチンの国家戦略』(東京道堂出版)『ロシアの軍事情報を配信するサイト「World Security Intelligence」(http://wsintell.org/top/)を運営。

ウクライナ危機で先鋭化

 こうした摩擦はこれまでにも幾度となく繰り返されてきたものだが、ウクライナ危機以降には、より深刻な政治・安全保障上の問題にまで発展するのではないかという見方も出始めている。

 その理由は主として3つある。

 第1に、ウクライナ危機によってロシアと西側諸国の関係が悪化した結果、ベラルーシもこれに巻き込まれる恐れが出てきた。特にベラルーシとして避けたいのは、米国やEUの対露制裁にベラルーシが巻き込まれることであろう。

 このため、ベラルーシはロシアによるクリミア併合について態度を明らかにしておらず、ドンバス地方での紛争についてもロシアに味方するのではなく停戦交渉の「仲介役」として振舞っている。それどころかベラルーシは依然としてウクライナとの軍需産業協力さえ維持しており、「連合国家」とはいいつつもウクライナ問題ではロシアとの距離を取ろうとする傾向が顕著だ。さらにルカシェンコ大統領は今年1月、「ウクライナの“親愛なる兄弟”達は独立のために戦っているのだ」とさえ述べている。

 第2に、軍事的緊張がさらに高まった場合には、ベラルーシはロシアの前線国家にされかねない。ベラルーシはNATO加盟国であるポーランド、リトアニア、ラトヴィアと国境を接しており、いざ対NATO戦争となった場合には戦場になる可能性が高い(実際、ロシア軍西部軍管区が実施する対NATO演習ではベラルーシが主な舞台となる)。

 これはベラルーシとしてはさらにありがたくないシナリオであろう。このため、ベラルーシはレーダーや通信基地といったごく少数の例外を除き、ロシア軍の駐留を認めてこなかった。これに対してロシアはベラルーシにロシア空軍基地を設置させるよう圧力を掛けており、長らく両国の懸案となっていたが、2月に記者会見に臨んだルカシェンコ大統領は基地設置を拒否する考えを表明している。

 また、ベラルーシはロシアの同盟国でありながら、自国を「中立国」であると位置付ける憲法第18条の規定を維持しており、ロシアを敵には回さないまでもロシアの軍事紛争に巻き込まれたくないとの立場も垣間見える。

 第3に、ロシアの言うことを聞かない旧ソ連の「友好国」にロシアが軍事介入を行うというウクライナ危機の構図は、ベラルーシでも繰り返されかねない。前述の記者会見においてルカシェンコ大統領は「ロシアはベラルーシが離れて行ってしまい、ルカシェンコが西側に寝返ることを恐れているのだ」と述べているが、ロシアのウクライナ介入はまさにウクライナがこのような状況に陥りかねないとの懸念を背景としていた。

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