2024年4月26日(金)

ペコペコ・サラリーマン哲学

2010年5月10日

<書き出し>「郵政改革などで独自の主張を展開し、鳩山内閣を振り回している感じのある亀井静香氏。何を目的に、肌合いの異なる民主党と連立を組み、暴れ回っているのか」

<取材を終えて>「オーソドックスな保守論と弱者救済など社会主義的政策が共存している。そして、国家の役割を重視し、米国流の新自由主義を徹底的に否定する。グローバルな問題への対応が欠かせない時代に、日本という枠にこだわり続ける少数派の政治家だ。
若い頃は自民党タカ派議員の代表的な存在だったが(中略)
政界で生き残るために国際化に背を向け、あえて『時代遅れ』を演じることが宿命づけられてしまったかのような印象を受けた」

高校時代の先生の素朴な疑問

 この「右(保守)だか左(革新)だかわからない」、そして「国際性より日本性を大事にしようとする」ところが、亀井君の不思議なところであり、他の誰にもない最大の魅力でもあると思います。

 このコラム(「高校同窓生からみた亀井静香氏・第1回」で、こんなエピソードを紹介しました。大学時代の亀井君が、どてらを着こなし寮歌を歌い、学生運動には参加せず、旧制高校からの伝統を大事にする会に属するなど、保守的な嗜好の持ち主だったにもかかわらず、学生運動を推進していた自治会委員長が停学処分を受けるやいなや、「思想哲学は合わないが、トップだけに責任を負わせるのはけしからん、そういう処分を下した大学当局に反対する」 とハンストに率先して参加しました。「右だか左だかわからない」亀井君の真骨頂です。

 都立大泉高校時代、数学を担当していた本田正俊先生が、こんなことを何人かの亀井君の同学年生に問いかけたことがあります。亀井君が警察官僚を辞め、自民党から衆議院選挙に出馬した直後のことです。

 「亀井君は高校生のころ正義漢で左翼的だったのに、今度なぜ自民に入ったのかなあ」

 本田先生は本当に純粋な方で、神様のように純真な心を持った先生だっただけに、心から教え子の亀井君のことを心配し、応援していたのだと思います。亀井君はそれからまもなく本田先生のところへ直に説明しにいったようで、その後先生はこの話をしなくなりました。

 亀井君は、イデオロギーからは離れ、自分の実体験の積み重ねからつくりあげた、独自の理論に基づいて行動しているのだと思います。だからこそ、その人間くさい言動に、衆目が集まるのでしょう。

 亀井君は独特な立場にいます。まず民主党の議員ではないから鳩山首相にも小沢幹事長にも遠慮する必要がないでしょう。自民党時代に閣僚など要職を経験し、自社さ連立のキーマンでもありましたから、政治の酸いも甘いも知り尽くしています。だからこそ、この数日の間にものすごい勢いで襲ってきた内外の難事に、どう対応するつもりなのか、熟考を重ねたあとの箴言(しんげん)でいいから考えを聞かせてほしいと思います。


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