東大教授 浜野保樹のメディア対談録

2010年5月11日

石原 自分が子供の頃そうでしたが、子供って、「これが好きだ」となると猛烈なスピードでその世界に浸りこむ。でもびっくりするくらい早く、その世界を出て行って、次の対象に移り進んでいくという感じがします。世界中の子供が、みんなそうだと思います。

 そういう子供たちが長く付き合ってくれ、時に離れていくかもしれないけどまた帰って来て遊んでくれるという、そういう遊びを作り出すのは確かに簡単なことではないと思います。

 今まで続けてこられたわけは何だったかと言うと、今度はこんなこと、その次にはあんなこと、っていう、面白く遊んでもらえるアイデアが今までなくならなかったからでしょうか。

子供たちの声にならない声を聞く

 これをやったら楽しいだろうな、とか、びっくりしてくれるんじゃないかっていう、そういうことを考えることは自分にとっても楽しいし、また自分が楽しいことをしているからこそ、お客さんも楽しんでくれる。そういうところがあるんだと思います。

 だから、もうこういうパターンでやるのはイヤだな、とか、作るのが自分でしんどくなってしまったら、そういう後ろ向きな感じはきっと商品の中に入り込み、滲み込んでいく可能性があるんだと思います。

 それは、「質が落ちたな」「新しさがなくなったな」という反応になり、如実に現れると思います。子供たちは、そう言葉に出しては言わないかもしれない。すっと、居なくなって、別のところで遊ぶのだろうと思います。

 もちろん面白かったとか、もっとこうしてほしいという子供たちの声を聞くことはありますが、声にならない声の方が圧倒的に多いわけです。だからこそ、自分が楽しめるという状態を維持できるということが、声にならない声を味方につけておくうえで重要だと思っています。

 僕としては新しい仕組み、遊びを作って、常に子供たちをびっくりさせたいんです。そういう状態がこれまではずっと続いてきたということでしょうか。

司会 いとも簡単におっしゃるんですが、浜野さん、何かツッコミをどうぞ。

浜野 ディズニーの歴史を振り返ると、成功していくにつれ、技術革新をテコに全然違うことを始めています。

 短編映画しか撮っていなかったのが、白雪姫のような長編を手がけてみたり、ね。目の前にある成功を土台にすれば、もっとほかのことがいろいろとできるだろうと考えるのは、これはむしろ自然な成り行きだろうと思うんです。

長くやるつもりじゃなかった

 石原さんは、ポケモンに留まって――ポケモン自体の世界観が広いからこそそれが可能だったんだと思いますが――、今日まで来られた。脇見をしなかったわけです。そうさせた力とは何だったと思われますか。

石原 いや僕も、当初始めた頃は、ここまで長く続けることになるとは思いませんでした(笑)。

関連記事

新着記事

»もっと見る