2024年4月25日(木)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2017年2月17日

トランプの非言語コミュニケーション

 今回の日米首脳会談は、トランプ大統領のハグ、握手及び表情といった非言語コミュニケーションが印象的でした。同大統領が安倍首相とハグをして出迎えた理由は上で述べた第1と2に拠るところが大きいと言えます。

 次に握手です。握手の種類には、堅実型、無力型、強烈型、指触型及び過剰型があります(図表3)。堅実型握手は、互いの手の付け根まで深く入れて堅く握り、上下に2、3回振ってさっと引きます。堅実型は自尊心と相手に対する敬意を示しており、適切な握手の仕方です。

 日本人に多い無力型握手は、自信がないというメッセージを相手に送ります。そう言われて、堅く握り過ぎると強烈型握手になってしまいます。指先だけで握手をする指触型及び右手で握手をしながら左手で相手の腕をつかむ過剰型も不適切な握手です。

 余談ですが、米大統領選挙期間中、筆者はバラク・オバマ前大統領と3回、ミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事と11回、ヒラリー・クリントン前国務長官と4回、ビル・クリントン元大統領、娘のチェルシーさん、クリス・クリスティニュージャージー州知事(共和党)とそれぞれ1回握手を交わしたことがあります。オバマ大統領の握手は堅実型というよりもソフトで暖かみがありました。クリントン前国務長官も比較的柔らかい握手をします。夫のクリントン元大統領は堅実型です。では、娘のチェルシーさんはどうでしょうか。2016年民主党候補指名争いの最中、ミシガン州デトロイトにあったクリントン選対を訪問したシェルシーさんと握手をしましたが、父親のクリントン元大統領と同じ堅実型でした。

 一方、ロムニー元知事の握手は堅実型で、しかも手のひらに余韻が残ります。クリスティ知事の握手は、日本人の筆者にとって強烈型で早く手を離してもらいたいと思ったほどです。

 さて、日米首脳会談では、トランプ大統領と安倍首相は約19秒握手をしました。安倍首相を笑顔で見つめる同大統領の表情に親しみを抱いた日本人も少なくなかったでしょう。ただ、同大統領の仕草から心理的な側面が見えてきます。

 まず、トランプ大統領は握手をしている安倍首相の手をポン、ポンと叩き、自分の左手をその上にのせました。そこには相手を支配ないしコントロールする意識を読み取ることができます。同大統領の握手をしながら自分に引き寄せる動作も看過できません。この動作には自分が主導権を握るという意識が現れています。日米首脳会談とは対照的に、米加首脳会談ではカナダのジャスティン・トルドー首相とトランプ大統領は堅実型握手をして、「同等」な関係をアピールしています。


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