2024年4月20日(土)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2017年2月21日

 第3は、第1と関係があるのですが、トランプ大統領に熱狂的なトランプ信者の維持です。同大統領は状況が不利になると、今後支持者を集めた集会を用いてトランプ信者に政策の正当性を訴えていくことが見えてきました。

 トランプ大統領は、この1カ月間、国家安全保障担当の大統領補佐官マイケル・フリン氏の辞任、次期労働長官に指名したアンドリュー・パズダー氏の辞退及び大統領顧問ケリアン・コンウェイ氏の失言など種々の問題に直面してきました。そこで、2月18日南部フロリダ州で集会を開いてポイントを稼いでダメージコントロールを行ったのです。それに加えて、集会には孤立していない自分を演出する狙いもあったのです。  

 第4に、「忘れられた人々」のメッセンジャー(伝達者)です。トランプ大統領は上の集会で自分が忘れられた人々のメッセンジャーであることを強調しています。ワシントンにいる職業政治家及びエスタブリッシュメント(既存の支配層)から無視されてきた白人労働者、退役軍人、不法移民によって子供を殺害された親並びに規制によって自由を奪われたと強く感じている有権者の声を代弁し伝達するメッセンジャーであると言うのです。

 「忘れられた人々」はトランプ氏を大統領にしてくれた忠誠心の高い有権者です。トランプ大統領は内政及び外交において、「忘れられた人々」の利益代表者であるという視点でみると、同大統領の言動が理解できます。

見えてこないもの

 トランプ大統領には就任して1カ月が経過しても依然として見えてこないものがあります。それらを「価値観」「コミットメント(関与)」「ミッション(使命)」並びに「ビジョン」に基づいて述べてみましょう(図表2)。


 超大国米国のトランプ大統領は、「自由」及び「平等」といった価値観を含んだ「人権」について全くと言ってよいほど語りません。同大統領が平和のために世界の出来事に積極的に関与するのかについても見えてきません。たとえ、海外の政治指導者との共同記者会見で外交について触れても、内政のように目に見える形で行動を起こしていません。どちらかと言えば、現在のところ外交において「3つの無」、即ち「無関与・無関心・無干渉」です。

 トランプ大統領のミッションは白人労働者及び退役軍人のための雇用創出であり、その点においては使命感を持っていると言えるのですが、超大国のリーダーとして世界に対してどのような使命を抱いているのかに関しては不透明です。ただ、同大統領は通商及び難民に関してはビジョンを持っているように窺えます。「自由貿易」ではなく2国間協定による「公平な貿易」並びに難民受け入れに反対の立場をとっています。それを超大国米国の大統領が描いているあるべき姿とするならば、世界から共感を得るのはかなり困難であることは間違いありません。


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