海野素央の Love Trumps Hate

2017年3月2日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「トランプの二刀流リーダーシップスタイル」です。中間管理職を対象としたリーダーシップ研修を実施しますと、参加者からリーダーシップとは「グイグイ引っ張ることです」という回答が返ってきます。率先垂範型リーダーを想像して答えているのでしょう。リーダーシップスタイルは、本当に率先垂範型だけでしょうか。

 本稿では、リーダーシップ論を用いながらバラク・オバマ前大統領、ジェームズ・マティス国防長官及びドナルド・トランプ大統領のリーダーシップスタイルを比較してみます。そのうえで、トランプ氏のリーダーシップが米国社会や世界にどのような影響を及ぼすのかについて考えてみます。

トランプ大統領とマティス国防長官(GettyImages)
 

傾聴・敬意型リーダーシップスタイル

 2012年米大統領選挙で筆者は研究の一環として南部バージニア州オバマ選対入り、説得のトレーニングを受けました。同陣営の説得の仕方は、以下の4段階です(図表)。

 第1段階は、承認と関係作りです。戸別訪問の際、自分の意見を述べて説得する前に、標的となっている有権者にストーリー(物語)を語らせろと言うのです。そのストーリーは、医療保険制度改革や雇用問題であるかもしれません。「なるほど。そのような見方もあるのですね」と言って相手の意見を全面的に否定せずに、承認から入ります。「有権者の意見や関心に対して、敬意を持って積極的に傾聴し共通点を発見せよ」と選対の責任者から指示が出ていました。ポイントは、承認後に相手の関心と関連した自分のストーリーを語って関係を作ることです。

 第2段階は、価値観です。説得して人を動かすには相手の価値観を使うのが効果的です。ストーリーテリング(物語を語る)というコミュニケーションの手法を用いて、相手の価値観に訴えます。例えば、「公平・不公平」を重視する相手には、それらの価値観を含めたストーリーを語ります。

 第3段階は、実績です。第1と第2段階を経て、初めてここでバラク・オバマ大統領(当時)の実績を述べます。相手との心理的距離を縮めてから、実績を話します。というのは、実績やセールスポイントから入ると説得が困難になってしまうからです。

 第4段階は、対比です。上の3段階を踏んでから、オバマ氏とライバルであったミット・ロムニーマサチューセッツ州元知事の政策の比較を行います。同大統領の政策の方が、ロムニー氏のそれよりもメリットがあると標的となっている有権者に強調するのです。営業に喩えますと、競合他社と自社の製品の比較は最後に行うということになります。

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