2024年4月20日(土)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2017年3月2日

 しかもトランプ大統領は、有権者に知的刺激も与えました。例えば、移民及び難民問題に対して、従来型のアプローチの仕方に疑問を呈して新しい視点から提案を行い、大統領令に署名しました。周知の通り、その大統領令は米国社会と世界に混乱を招き、家族に苦痛を与えています。

 変革型に加えて、トランプ大統領のリーダーシップスタイルには取引型の側面も観察できます。選挙期間中はイスラム教徒の入国一時禁止を提案し、それと引き換えに反移民や反難民の感情が強い有権者に自分への投票を促しました。大統領就任後はイスラム圏7カ国入国一時禁止により、忠誠心のある支持者固めを行っています。

 トランプ大統領は、変革型と取引型の双方のリーダーシップを持ち合わせているのですが、使い方に問題があると言わざるを得ません。というのは、特定の支持者、殊に白人労働者及び退役軍人の利益確保のためにリーダーシップを発揮しているからです。しかも、人種、民族及び宗教の対立構図を使用したモチベーションの鼓舞は、米国社会や世界を統合ないし融合に導くのではなく、文化的背景の異なる人々に対する憎悪を煽り、分断を深化させるからです。結局、同大統領の変革型と取引型の二刀流リーダーシップは、異文化共生及び協働を困難にするのです。

  
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