中東を読み解く

2017年3月7日

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IS壊滅作戦まとまる

 こうした中で国防総省はトランプ大統領から指示されたIS壊滅作戦をまとめ、ホワイトハウスで吟味中だ。ワシントン・ポスト紙などによると、基本的な方針はオバマ政権が採用していた枠組みから大きく離れていない。

 主な内容としては、現在約500人のシリア駐留特殊部隊の増強、空爆強化、アパッチ攻撃ヘリ、火砲の投入の他、前線に近接したところへの部隊展開、交戦規定の緩和、軍への裁量権付与などが含まれている。特殊部隊が遠方からの砲撃だけではなく、前線での戦闘任務に参加するのかどうかは不明。

 軍への裁量権付与については、これまでは緊急の作戦にホワイトハウスなどからの承認を得るのに時間がかかり支障が出ることがあった。しかし今度は現場の指揮官らに大きな裁量権が委ねられることになり、作戦の遂行がしやすくなるという面がある一方、現場が独走しかねないとの懸念も出ている。

 もう一つ重要なことは、この新作戦でもクルド人とアラブ人の「シリア民主軍」(SDF)に地上戦を担わせることになった点だ。トルコはクルド人の参加には強く反対してきたが、トランプ政権は引き続きクルド人を地上戦の主力部隊とする見通しで、トルコの不満が残った。

 SDF(5万人)は現在、ISの事実上の首都であるシリアのラッカまで約10キロに迫っており、作戦の第1段階である「ラッカ孤立化」は数週間以内に完了する見通し。その後、いよいよラッカへの突入作戦に入る。

 イラクのISの最後の砦である北部のモスルの奪回は米軍の空爆支援を受けたイラク軍がすでにチグリス川の東側を制圧し、市の中心である西側の掃討作戦を遂行中。比較的順調に作戦が進んでいるとされ、5月までには奪回が可能との見方も出ている。

 モスル郊外ではこのほど、ISの処刑場だったという直径30メートルほどの巨大な陥没穴が見つかった。ある者は背後から銃撃されて投げ込まれ、ある者は生きたまま蹴落とされたといわれる。この穴では数千人がISの手で処刑され、遺体は放置されたままだという。モスル奪回が近づく中で、ISの恐怖と残虐な爪痕も白日の下にさらされようとしている。

  
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