2017年4月24日(月)

プロッフェショナル人材戦略事務局

2017年3月20日

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「攻め」の姿勢で挑戦する企業が地方に「しごと」を生み、そこに活躍の場を求めて「ひと」が動き、活力をもたらす。この好循環を創る仕掛けとして始動した内閣府の人材事業。その意味と役割を「官」と「民」の目線から解き明かす。

究極の危機を救った経営者のマインドチェンジ

村上:長年、電子部品を受注生産してこられたはずのオオアサ電子さんが、「Egretta(エグレッタ)」シリーズでスピーカー市場に進出され、大きな成功を収められました。本当に凄いですね。

長田:ありがとうございます。お陰様で3年連続グッドデザイン賞をいただき、以前なら思いもよらなかった異業種の大手企業や研究機関、海外からの引き合いも増えています。また、新事業展開とともに人材も集まり始めました。

村上:今日は、ぜひ、その大転身の舞台裏について伺えればと思うのですが、広島県山間部、旧大朝町という小さな町の受託生産企業が、一体どうやって、ヒット商品メーカーへと変貌を遂げられたのでしょうか。秘訣を教えてください。

「発信なくして受信なし守りの会社に人は集まりません」 長田克司●Katsushi Nagata オオアサ電子株式会社 代表取締役社長 1983年に起業し、光学液晶、音響映像、環境エネルギーを柱に事業を展開。リーマンショックを境に業績低迷に苦しむが、2011年に発表した初の自社ブランド製品「Egretta」でV字回復を果たす。以後、「攻めの経営」でデザイン性・機能性に優れたモノづくりを続けている。

長田:実は、やらざるを得なくてやったのです(苦笑)。まずはリーマンショック。固定的な取引先の8割以上を突然失いました。加えて、頼りにしていた鳥取三洋さんもなくなってしまいます。200人からの従業員を抱えて廃業もやむを得ないほどの窮地に立たされました。背水の陣をしくしかなかったのです。しかし、30年にわたり社業を支え続けた人材は唯一の財産。それを安易に切り捨てることだけはしたくなかった。技術の切り捨てにも繋がってしまいます。

 どうするか。技術力を杖に攻めに出る、小さくても独自技術に拠って立つメーカーに脱皮する決意を固めました。

村上:まさに背水の陣。厳しい状況ですね。でも、自社ブランド製品第1号が、なぜ、スピーカーだったのですか。

長田:窮地に立たされ、改めて、社内の技術を徹底的に総点検したんです。そうしたら、当社が下請の中で磨いてきた素材加工技術が、音源はじめ音響製品に独特の価値を持つことが見えてきた。音響機器の製造自体も、OEM生産等で経験がまったくないわけではありませんでした。どうせやるなら、世の中にすでにあるものより独自性で勝負したい。日本ではあまり馴染みのない無指向性スピーカーなら、その価値があるのではないか。そう考えました。無指向性というのは、一方向ではなく空間全体に拡がるように音が伝わる。部屋のどこにいても自然で心地よい音響に包まれるのが魅力です。なぜか国内では高価な外国産が大半。これを手頃な価格で家庭に持ち込めるよう、インテリア性にもこだわった商品づくりに取り組み始めました。

村上:「Egretta」はイタリア語で「白鷺」を意味するそうですね。その名のとおり純白のスラッとした立ち姿が美しい。

長田:ありがとうございます。でも、完成当初は方々からバッシングの嵐でしたよ。無指向性で円筒形の白いスピーカーとは、業界を知らないにもほどがあると。老舗企業ほど門前払いでした。

村上:今では国産メーカーから続々と類似品が出ていますね。認知が得られるまで相当の営業努力があったのでは?

長田:はい。そこで頼りにしたのが、外部から雇ったプロフェッショナル人材でした。そして、何か新しいものを常に発信し続けることがいかに大切であるかを、彼の動きから学びました。

オオアサ電子が業界の常識を覆して開発した無指向性バスレフ・タワー型スピーカー「Egretta」TS1000F。360°の指向性でどこにいても包み込まれるようなサウンドを体験できる。

挑戦する企業を後押しするプロフェッショナル人材事業

村上:経済産業省の概算によると、日本のモノづくり中小企業は全国に約46万社。うち数千社は、すでに国際的にもニッチトップになれる実力を持つ。また、そのポテンシャルがあるのに気づいていない企業であれば数万社に及ぶとみられています。壁になるのは販路開拓。系列取引先に頼っているだけでは次の市場は拓けません。長田社長は、その壁をどのようにして乗り越えられたのですか。

長田:まさに「人のチカラ」です。初めての自社ブランド製品を創り上げたはいいものの、販路にあてがない。マーケティングの知識も皆無です。そこで急遽、東京の大手電機会社で役職定年を迎えた人材を営業の責任者に採用。目覚ましい活躍でした。無理だと思っていた家電量販店にも進出することができたのです。

「今こそマインドチェンジを『攻めの経営』に転じましょう」 村上敬亮●Keisuke Murakami 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局 参事官 1990年通商産業省(現経済産業省)入省。湾岸危機対応、地球温暖化防止条約交渉、PL法立法などに従事した後、約10年間IT政策を担当。2008年メディア・コンテンツ課長、09年地球環境対策室長、11年資源エネルギー庁新エネルギー対策課長を経て、14年9月より現職。

村上:プロを招き入れたことが、新しい挑戦への成功につながったわけですね。

長田:中小企業ではほとんどの従業員が役割兼務です。製造部門の長が生産管理も見ていたり。そこに専門性を持ったプロ人材が一人加わったことで、全体がぐんとレベルアップします。

村上:政府も、今まさに、地方創生の一環として「プロフェッショナル人材事業」を立ち上げました。潜在成長力のある企業を探し出す。探し出した企業に、オオアサ電子さんが遂げられたような「攻めの経営」への転換を促す。そして、その成長の実現に必要なプロフェッショナル人材の採用を支援する。そういう目的を持った事業です。

 ただし、これまでのやり方に自信のある経営者の方々に、「攻めの経営」への転身とそのチャレンジを促すのは簡単ではない。また仮に転身を決意したあとでも、必要なプロ人材を採用するのは、困難な作業。そこを支援する事業です。

長田:都会にはむしろ、大企業で一定の経験を積んで次のチャレンジの場を探している方が、案外多くいらっしゃるのかもしれませんね。

村上:そうなんです。実はこの事業、始めて約1年で800人以上のプロ人材の地方への転身を成功させました。しかも半数以上が40代以下の方々だったんです。我々にとっても意外な結果でした。