World Energy Watch

2017年3月15日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学経営学部教授

住友商事地球環境部長等を経て現職。経済産業省地球温暖化対策技術普及等推進事業審査委員会、東京商工会議所エネルギー・環境委員会委員などを務めている。近著に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム)。

中国企業による買収を懸念する欧州主要国

 欧州では、財政危機に陥った国が売却する資産の買い手として中国企業を歓迎する声もあった。資金の出し手として中国を評価する英国政府は、2015年に中国との間で「英中インフラ提携覚書」を締結する。中国の投資家に英国での学びのプログラムを提供すること。第三国での協力などが目標とされていた。2015年、2016年の中国企業による欧州企業の主な買収では、英国企業を対象にした買収が多くあった。

 しかし、中国が、金融、ハイテク企業の買収に乗り出してくるようになってから、情報、技術流出を懸念する欧州主要国では、米国のように外資による企業買収を審査する明確な規定と機関がないことが問題と指摘する声が大きくなってきた。また、低利の政府資金を利用し買収を行う中国企業の透明性を懸念する声も出てきた。最大の問題は、中国企業は自由に欧州企業の買収を行うことができるが、欧州企業は中国政府の規制を満たす必要があり、自由に買収を行うことができない片務的な関係にあることだった。

 2月上旬に、ドイツ、フランス、イタリア3カ国政府は、「中国企業、特に政府系企業による欧州企業の買収について審査する仕組みを作り、必要な場合には阻止すべき」との書状を欧州委員会に提出したと報道された。ただし、どのような法的仕組みが必要か詳細については、書状は触れていない。

 2月中旬に、欧州委員会の報道官は、「ある特定の第三国について、欧州諸国のアクセスに制限が設けられているとの懸念については、全く同感であり、議論に値する」と述べており、今後欧州委員会で取り上げられる可能性が高い。

欧州政治に影響も

 欧州ではフランス大統領選などが今年予定されている。米国大統領選でもテーマの一つは、グローバリゼーションと保護主義だった。今後の展開によっては、中国企業による欧州企業の買収が選挙のテーマの一つになる可能性もある。政府系機関による低金利の融資に支えられ、片務的な立場と時として不透明な企業間の関係を利用し買収を行う中国企業の行動は、いつまで欧州で容認されるのだろうか。

  
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