したたか者の流儀

2017年3月18日

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パスカル・ヤン (Pascal Yan)

著述家

著述家。ルーヴァン・カトリック大学大学院中退(ベルギー)。証券マンとして25年間、欧州を中心に海外で過ごす。現在の職業は都内大学教授。

 

 実は、福島第一の事故が起きなければ同社は原発建設や処理など関連ビジネスは順調に拡大傾向にあったのだ。

世界で最も影響のある女性

 社長だったアンヌ・ロヴェルジョンはフランス最高峰、高等師範学校物理科の出で原子力エリートだ。ミッテランにも贔屓にされ、2000年当初、当時のシラク大統領と中国に原発の売り込みにも行っている。その頃は、世界で最も影響のある女性のベストテンに入っている。

 3.11以降も彼女の強気は変わらなかったが、フィンランドで請け負っていた原発建設の大幅な工期の遅れが既に発生していた。

 今回トラブルがあったフランスの“雨傘”シェルブール近くのフランマンヴィル3号機建設で35億ユーロ程度当初予想コストから、追加費用がかさみ120億ユーロとなったという報道も出ていた。フィンランドでも同様の遅れと同等追加費用で、都合兆円単位の想定外の損失となったのだろう。

 その間、アンヌ・ロヴェルジョンは、カナダのウラン鉱山会社買収を巡り会計不正報告などで、フランス検察に調べられている。そればかりか、買収後に無価値の鉱山と判明したため、種々の事件に発展し職を失っている。日本の経営者と違い原子力のエキスパートでありながら、危ない橋を渡り事業存続のため、苦しい言い訳をしているのだ。計上された損もほぼ東芝と同額であろう。

 あの日、地震が起きなかったら、いまごろ彼女は偉人として大臣になっているかもしれない。東芝社員も始ったばかりのプレミアムフライデーを心置きなく享受していたかもしれない。

 たとえ地震があったとしても、福島第一の発電機が高台にあって、プラグのサイズがうまく合えばこんなことにならなかったかもしれない。誰も発電所で電力がなくなることを想像していなかったのだろう。近隣の東北電力から太い電線を前もって引いておけば軽傷でとどまったかもしれない。

 というわけで、現在東芝一人が叩かれているが、同じ方向に経営判断をしたところは、同じ結果になっていることを伝えたかっただけだ。

 だからリスクを取らずに流す経営者が生き延びるのであろうか。

  
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