世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年3月21日

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 もともと、「一つの中国」という概念は、同床異夢の概念であり、曖昧なものです。すなわち、中国は「一つの中国の原則」とこれを呼び、その中心的内容は「台湾は中国の固有の領土の一部」とするものです。これに対し、米国は1970年代以来、「一つの中国政策」をとる、と述べつつも、台湾が中国の一部であるとする中国の主張については、この中国の主張を「認識する」と言うにとどめ、中国の主張を「承認」したり、これに合意したことはありません。

 ところが、中国は交渉術として、意図的にこの両者を混淆し、「一つの中国の原則」と「一つの中国政策」を同一の内容をもつものとして扱ってきました。

 トランプが就任直前に「一つの中国に縛られない」とか、「一つの中国は交渉次第である」と述べたことは、中国にとって衝撃的であったことは想像に難くありません。そして、トランプが習近平との2月の電話会談のなかで、米国は「一つの中国政策」を尊重すると述べたことは、中国からは歓迎すべき譲歩と映ったことでしょう。

 ただし、トランプの言う「一つの中国政策」を尊重する、との表現を仔細に見れば、「我々の“一つの中国政策”を尊重する」、となっており、これまでの米国の立場に基本的変更はありません。いずれにせよ、米国の立場は、中国の言う「一つの中国の原則」ではなく、同床異夢のままです。

台湾の主権は中国に属していない

 ティラーソン国務長官は、その議会証言の中で、米国議会がレーガン時代に採択した台湾問題に関する「6つの保証」を引用しましたが、そのうちの一項目は「台湾の主権は中国に属していない」と明示したものです。

 つまり、トランプの就任前の表現は、トランプ・習近平電話会談のなかで修正されましたが、「一つの中国」をめぐる同床異夢のレトリックについての米中の立場については、なんら変更はないと見てよいのです。

 社説が「一つの中国」の解釈は別として、米国はいくつかの分野において、台湾との間で関係強化を図るべし、と述べているのは、米国の対台湾政策としての正攻法というべきものでしょう。

 「台湾関係法」に謳われている武器売却のレベルを上げること、ハリス太平洋軍司令官を含む軍関係者同士の往来のレベルを上げること、閣僚の台湾訪問を可能にすること、国際機関への台湾の参与の拡大を図ること、二国間経済協定を締結すること、などは的を射た指摘です。

 ここに挙げられた諸施策のうちのいくつかは、日本と台湾との間の関係強化にも当てはまるものです。日台間における「(財)日本台湾交流協会」(旧名称:交流協会)への名称変更は特筆すべき最近の進展ではありますが、今後は、人的往来のレベルアップ、日台間FTA協定の締結、国際場裏における台湾参画の拡大をはかることなどが主要目標となるでしょう。これらの具体的施策はいずれも「一つの中国」かどうか、という抽象的概念に踏み込むことなく取り得るものです。

  
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