世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年3月22日

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 オバマ政権で国務副長官を務めたアントニー・ブリンケンが、2月17日付ニューヨーク・タイムズ紙掲載の論説にて、イラン核合意に反対するトランプ政権は、正面から合意を破棄するのではなく、別の方法で合意を葬ろうとしている、と述べています。要旨、次の通り。

(iStock)
 

 トランプ大統領がイラン核合意を「ひどい」などと酷評していたことを考えると、米政府高官がEUの外交責任者モゲリーニに、トランプ大統領はイラン合意の全面実施を約束していると述べたことは注目される。

 しかし、トランプ政権の後退は戦略的再考の結果ではなく、一時的、戦術的なものかもしれない。ホワイトハウスの顧問たちは依然としてイラン合意に反対しているが、米国が一方的な合意からの離脱という正面攻撃をすると、米国と交渉仲間の欧州、ロシア、中国が仲違いし、イランではなく米国が孤立してしまうことを認識している。そこで彼らは別の方法で合意を葬ろうとしている。

 第一の方法は、「より良い取引」を要求することである。それはイランの軍事施設へのアクセスを増加すること、あるいは弾道ミサイルを合意の対象とすることかもしれない。しかし、他の交渉参加国が再交渉に応じる可能性はまず考えられない。再交渉を求める主たる目的は、米国が非難されないように、事態を混乱させながら緩やかに合意を破棄に追い込むことだろう。

 別の方法は、核以外の分野でイランに圧力を加え、合意に反対するイランの強硬派を破棄に走らせるシナリオである。イランの問題行動は多い。弾道ミサイルの実験の他に、イエメンのホーシー族支援、ペルシャ湾での航行妨害、シリアのアサド支持、ヒズボラとハマス支援、イラクの過激なシーア派民兵支持、イラン国民の弾圧などである。

 オバマ政権はこれらを念頭に、核以外の分野での制裁を維持、強化してきたが、同時にこれらのイランの「悪行」は核武装したイランの下でははるかに危険で対決しにくいと考え、核合意が破綻しないよう、追加的圧力については慎重に対処した。

 トランプ政権は、核以外の分野で制裁を復活させたり、イランの革命防衛隊をテロ組織と認定することにより、イランが堪えがたいような圧力を加えるかもしれない。革命防衛隊はイラン革命の公式の擁護者であるのみならず、イラン経済で大きな役割を果たしている。ブッシュ、オバマ政権はイランをテロ支援国家と指定し、革命防衛隊の個々の司令官に制裁を加えたが、代価の方が利益より大きいと考え、革命防衛隊自身をテロ組織と指定することはしなかった。

 革命防衛隊に直接挑戦すれば、その司令官たちは核合意からの撤退を迫り、核合意の主たる推進者であったロウハニ大統領の再選の見通しを暗くするだろう。またイラクで米軍と並んでISと戦っているシーア派の民兵に、イラクの米軍を攻撃させるかもしれない。またペルシャ湾の米国船舶を攻撃し、ホルムズ海峡を封鎖しようとするかもしれない。ケリー前国務長官とザリフ外務大臣との間で作られた危機管理のチャネルが使えなくなると、これらの行動は全面対決に拡大する恐れがある。そうなったら核合意の喪失どころではなくなる。

出典:Antony J. Blinken,‘Why the Iran Nuclear Deal Must Stand’(New York Times, February 17, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/02/17/opinion/why-the-iran-nuclear-deal-must-stand.html

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