中東を読み解く

2017年3月17日

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トルコの方向性に影

 エルドアン氏がこうした“抵抗勢力”を作り上げて利用したのは今回が初めてではない。2015年6月の総選挙ではエルドアン氏の与党「公正発展党」が過半数を割る敗北を喫した。同氏はこの時、反体制派クルド人に「平和の敵」とのレッテルを張って対決姿勢を前面に掲げ、国民の不安をかき立てて、11月の再選挙を圧勝に導いた。敵が欧州に変わっただけで、基本的には今回も同様の手法だ。

 特にエルドアン氏は国内では、極右の「民族主義者行動党」の支持を得ることに躍起になっている。同党の指導部はエルドアン支持を打ち出しているが、支持者らはまだ態度を決めかねているといわれる。党の支持者はとりわけ愛国心が強く、エルドアン氏が欧州との対決をことさら強調しているのも、この支持者らの取り込みのためであるとされる。

 しかしトルコの良識派はエルドアン氏が目先の国民投票に勝つことだけに集中するあまり、長年にわたって積み上げてきたEU加盟交渉などが完全に頓挫し、欧州との関係自体も崩壊してしまう、と憂慮している。

 良識派の懸念は、エルドアン氏が国内のイスラム化を進めるイスラム主義者で、欧州との関係を台無しにしてもかまわないと思っているフシがあることだ。欧州との関係が変化することは政教分離を国是としてきたトルコの方向性に影を落とすことにもなる。

 トルコでは昨年7月のクーデター未遂以来、軍人や公務員など4万5000人が逮捕され、13万人が職を追われた。エルドアン氏は今も、クーデターの首謀者と非難するギュレン派の一掃運動に余念がないが、国民投票はトルコの将来を左右する大きな転換点として記録されることになるかもしれない。

  
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