特別対談企画「出口さんの学び舎」

2017年3月27日

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「憲法9条は、13条や国際法と合わせて立体的に読んでほしい」

出口:次に考えたいのは、日本国憲法の中身です。最も特色があるのは、やはり9条でしょうか?

木村:憲法9条はなかなか難しい条文ですが、改憲派護憲派問わず9条しか読まない人が多いのが、私は不満なんです。

出口:ほう。

木村:現在の国際法では、「武力不行使原則」が確立しています。19世紀までの国際法では、戦争は違法ではありませんでした。それが20世紀に入って、戦争自体を違法とする不戦条約が結ばれました。不戦条約の最初は1904年ですが、「国債を回収するために武力行使してはいけない」というところからスタートしています。逆に言うと、当時は金を回収するために武力行使していたことになるんですね。

 そして、1919年の国際連盟規約、1928年のパリ不戦条約などが積み重なり、第二次世界大戦後に、「武力行使は一般的に違法である」という原則が確立。現在は国連憲章にも書かれています。「武力行使をやめよう」というのは、実は憲法9条に言われるまでもないわけです。

出口:グローバルスタンダードなんですね。

 

木村:あくまで紙の上では、アメリカ、ロシア、韓国、北朝鮮、中国、ベトナム、タイ、これらの国々全てが国連加盟国である以上、武力行使しないという原則にコミットしています。

木村:ただし、国連憲章には「武力不行使原則を破って侵略する国が現れたときだけは、武力行使をして良い」というルールが定められている。侵略国家が現れた場合には、国連の安保理決議に基づく措置として、みんなで対応するのが原則です。もっとも安保理決議が出るには時間もかかるし、場合によっては拒否権が行使されるなどして、国連が措置を取れないこともあります。そこを補うために、各国が個別または集団の自衛権を行使するというルールです。

 そこで、「憲法9条がどうか」という話です。

 9条1項は「侵略戦争をしない」という趣旨の規定なので、「1項がおかしい」と主張する人は、改憲派にもあまりいません。変える必要はない、むしろ守るべきだという人が多いんです。

 問題は2項です。「軍と戦力を持たない」と書いてある。これを読むと、集団的自衛権はもちろん個別的自衛権も含めて、日本は武力を行使してはいけないということになります。 「9条があらゆる武力行使を禁じている」という点については、ほとんどの人が認める見解ですし、現在の安倍政権含め、日本政府もそう解釈している。

 ただ、法律の条文は例外を認めることがあるんですね。9条についても例外があるのではないか、についての検討が必要になります。

出口:いわゆる、自衛隊合憲説ですね。

木村:はい。日本国憲法13条には、「国民の生命の自由、幸福追求の権利は、国政の上で最大限尊重しなくてはいけない」と書いてあります。外国からの侵略があったとき、その侵略を放置すると、国民の生命の自由や幸福を尊重しているとは言えない。したがって、「武力行使するな」という9条のルールと、「国民の生命を最大限尊重しよう」という13条のルールがぶつかってしまうのです。

 どちらが優先するかは解釈で決めるしかないんですが、日本政府は「国民を守るのはどの国でも最低限の義務だから、9条に対して13条が優先する。つまり、国民を守るという範囲においては、9条の例外として武力行使は許されるし、そのための実力保持も許される」と解釈しているのです。

 憲法9条は、それだけを読むと、両極端な議論で終わってしまうのですが、ぜひ国際法や憲法13条と合わせて立体的に読んでほしいんです。

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