特別対談企画「出口さんの学び舎」

2017年3月27日

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「自衛隊の海外活動は国民の監視が甘くなります」

出口:憲法13条や国際法など全体の法体系の中で、自衛隊は合憲ということですが、実際に自衛隊は何をしているのでしょう?

木村:自衛隊には仕事が3つ+1くらいあるんです。ひとつは「外国の侵略から日本を守る」。これが一番重要で、13条から導かれるものです。それだけでなく、テロリストや警察の手にあまる犯罪者が出てきたときには、「治安出動」で押さえます。これも非常に大事な仕事です。最後に、「災害から国民を守る」。実際、自衛隊がこれまで出動したのは災害のときだけです。大災害が起きたときにレスキューに行ったり、がれきを除去したりします。

木村:それとは別に、自衛隊は大きな組織でさまざまな技術を持っているので、「国際貢献」を求められることがあります。PKO活動などが典型ですが、外国のインフラ整備や、場合によっては治安維持を手伝うこともあります。たとえばソマリア沖の海賊対策。相手は犯罪者なので、海賊を捕まえたら日本の刑法を適用するため日本に連れてくるのですが、ソマリ語を話せる人が少ないんですよ。

出口:弁護士、裁判官ともに立件が大変ですね。

木村:単純な効率を考えたら、ソマリア周辺国の人たちに治安活動をしてもらう方がいい。でも、「みんなでやっているので来い」と言われて派遣するわけです。

 ただ、自衛隊の国外活動には、注意すべき点もあります。南スーダンのケースを見ても、国外でやっていることはメディアも取材しにくいので国民の関心が高まりにくく、監視が甘くなります。そこが非常に危ないんですね。自衛隊は侵略活動をしているわけではなく、その国の政府に協力するために活動しているのですが、自衛隊員の安全は確保できているかとか、外国政府が自国民を抑圧するのに加担してしまっていないかなど、気をつけなければいけないと思います。

出口:国際貢献をしようと思うと、それなりの装備と技術を持った集団は、自衛隊以外にないですよね。

木村:これも結構微妙なところです。たとえばPKOにもいろいろなやり方があって、文民警察官を配置する場合もある。自衛隊がこれまでやってきたことって、HPを見ると、ほとんどがインフラ整備なんですよ。

出口:道路を作った、学校を作った、橋をかけた、などですね。

木村:どちらかというと、土木事業者のHPみたいになっているんです。出口さんはいろいろな国際交流をされているのでわかると思いますが、こちらの技術をポンと出してしまうことが、その国のために本当にいいかというと微妙ですよね。むしろ重機の使い方を教えて、道路はその国の人たちで作る方が国際貢献になるのでは。

出口:パンを与えるのではなく、魚の釣り方を教えるということですね。

木村:そうです、そうです。道路を作れば誰もが喜ぶし、役立っている感じがしますが、もっとできることがあるのではないでしょうか。自衛隊の国際貢献を考えると、今やっていることが本当にいいのかという視点を持たなければいけないと思います。

*後編へ続く(3月28日公開予定)

木村 草太(きむら そうた)
1980年神奈川県生まれ。専攻は憲法学。2003年東京大学法学部卒。同大学大学院法学政治学研究科助手を経て、現在、首都大学東京大学院社会科学研究科法学政治学専攻・都市教養学部法学系教授。著書は『憲法の急所──権利論を組み立てる 第2版』(羽鳥書店)
出口 治明(でぐち はるあき)
1948年三重県生まれ。京都大学法学部卒業。ライフネット生命保険株式会社代表取締役会長。日本生命保険相互会社に入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て退職。2006年に生命保険準備会社を設立し、代表取締役社長に就任。生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社を開業。2016年6月より現職。
著書は『世界一子どもを育てやすい国にしよう 』出口治明・駒崎弘樹 (著)(ウェッジ)、『「働き方」の教科書: 人生と仕事とお金の基本』(新潮文庫)


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