ネット炎上のかけらを拾いに

2017年3月23日

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いつの間にかテレビは最も保守的なメディアになった

 冒頭のエピソードではないが、女性の場合、どんな偉業を成し遂げたとしてもルックスが良くなければ……という風潮は確かにある。女性の場合にルックスがここまで「重視」されている理由は、「女の幸せは結婚である」と未だに言い立てる人がいることと無関係ではないだろう。

 女性アスリートにしても女性実業家にしても、インタビューの席で「彼氏は?」「結婚のご予定は?」などと、まったく仕事とは関係のない質問をされる光景はよく目にする。どんなに実績を積んでも、異性からモテていなければ、もしくは結婚・出産をしていなければ「女としての幸せを得ていない」。そうやって見下すことができてしまう風潮。

 男性の場合、そのキャリアは「モテ」「結婚」と容易につながる。若手実業家や文化人、スポーツ選手の男性が、女優やモデル、アナウンサーなどルックスに優れた女性と結婚するケースは非常に多い。逆に、女性の実業家や作家、スポーツ選手が、男優やモデルと結婚するケースはとても稀だ。

 これは異性に求めるものが男女で決定的に差があることを意味する。少し前に「※ただしイケメンに限る」というネット用語が流行ったが、実際の世の中は「※ただし美女に限る」であることは誰の目にも明らかだ。逆に男性に求められているものが何かといえば、それは「財産」であり、「※ただし金持ちに限る」の方が現状を正しく表していただろう。

 ネットで「※イケメンに限る」を言い始めた人も、本当は「※金持ちに限る」の現実に気づいていたのではないか。そちらを直視する方がツラい現実だったのではないか。確かに、現状を露骨に表現することは「品のなさ」に直結するばかりではなく、マイナスの価値観で人の自由を縛り、苦しさを与える。

 女の価値は美、男の価値は財産。その意識が根底にあるからこそ、偉業を達成した女性のルックスを揶揄したり、ひどいときには「オレは抱けない」と言うことで、その実績を“認めない”スタンスを取ろうとする人がいる。一方で、以前このコラムで扱った「安い電気に替えるか稼ぎのいい夫に替えるか」というCMが「許されて」いる。

 この程度の軽口や表現など許されるべきという考えの人ももちろんいるだろう。

 モラルや表現はその時代によって変わる。だからこれは善悪というよりも、各個人が社会をどちらに向かわせたいかの話だ。筆者としては、「じゃあイケるんですか~?」も「稼ぎのいい夫に替える」も、どちらも目新しさのない冗談であり、少々古臭いと言いたい。付け加えれば幼稚。人気番組のプロデューサーがこういうことを口にし、こういうテレビCMが受け入れられることを前提に流れ続ける。かつて革新的だったテレビは今や最も保守的なメディアとなった。

  
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