2024年4月20日(土)

前向きに読み解く経済の裏側

2017年3月27日

放漫経営をして傾いた借り手を、銀行が支えるか否か、難しい判断

 放漫経営をしている企業が融資の返済を待って欲しいと銀行に依頼してきた時、銀行としては、悩みます。強引に融資を返済させれば、借り手は倒産し、従業員は失業するでしょう。銀行自身にとっても、借り手の工場設備がスクラップ業者に二束三文で買い叩かれてしまうと、ほとんど回収出来なくなりかねませんから、生かさず殺さず、少しずつ回収する方が得でしょう。

 しかし、返済を待ってあげると、他の借り手も「我が社が放漫経営をしても、銀行は我が社を支えてくれるだろう」と考えて、放漫経営をするかもしれません。それでは銀行は堪りません。

 理屈上は、「放漫経営をしていた会社のうち、10社に1社は、見殺しにする」といった対応が考えられます。そうなれば、すべての会社が「自社が見殺しにされる可能性」を考えて、慎重に経営するようになるでしょうから。もっとも、「どの会社を支え、どの会社を見殺しにするのかをルーレットで決める」のは、気持ちの良いものではありませんね(笑)。

 ちなみに、東芝については、放漫経営だったと言うべきか否か、筆者は事情に詳しくありませんが、「ここで東芝を救済したら、他社も東芝を真似て、赤字経営をするようになるから、見せしめのために、東芝を見殺しにしよう」という話にはなっていないようです。「借り手の図体が大きすぎるので、見放した時の日本経済へのインパクトや銀行の収益へのインパクトが大きすぎる」という事かもしれませんね。

銀行の放漫経営は事情が異なる面も

 銀行が放漫経営を行った場合、政府・日銀がこれを救済するか否か、という問題もあります。基本的な考え方は同じで、放漫経営を行った銀行を救済すると、他行も放漫経営をしかねない、ということが制約要因となるわけですが、一般企業の場合と銀行の場合は、若干事情が異なるので、やっかいです。

 第一に、銀行が倒産すると、一般企業が倒産した場合と比べて、経済に与える打撃が桁違いに大きくなります。特に、大手銀行の倒産は、金融危機を招き、経済を深刻な不況に陥れる可能性が高いと言われています。リーマン・ショックは、倒産したのが銀行ではなく証券会社でしたが、金融市場のみならず、世界経済に極めて大きな打撃を与えました。

 米国政府がリーマン・ブラザーズを見殺しにした本当の理由は不明ですが、「モラル・ハザードを防止するためだった」という説も有力です。そうだとすると、「浪費癖のあるバカ息子に仕送りしないでいたら、バカ息子が餓死してしまった」といった所でしょうか。「角を矯めて牛を殺す」と言う言葉がありましたね。


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