BBC News

2017年3月24日

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北朝鮮のミサイル用新型エンジンの燃焼実験に関する、今週の国営メディアの報道の仕方はいつも通りだった。しかし、最高指導者の金正恩・朝鮮労働党委員長が実験を祝う様子を撮影した1枚の写真が、特に見る者の目を引いた。BBCが写真を点検した。

北朝鮮は、エンジンの実験は成功だったと表明し、同国にロケット産業が「新たに誕生した」と伝えた。金委員長が喜ぶのは当然だろう。

朝鮮中央通信(KCNA)が配信した写真には、金委員長が遠くから実験を見る姿や、管制センターで笑顔を見せる姿、歓喜する幹部らと握手する姿があった。そしてさらに、高齢の男性をおんぶする姿もあったのだ。

金委員長のような独裁者の背中に、いったい誰が飛び乗るのだろうか。そしてなぜ?

専門家らは、この謎の男性について、北朝鮮政治で知られた人物ではないと話す。男性は燃焼実験で重要な役割を果たしたとみられ、金委員長とは以前にも会っている可能性が高い。

北朝鮮に詳しい米ジョンズ・ホプキンス大学・米韓研究所のマイケル・マッデン氏は、男性が着ている制服から、朝鮮人民軍(KPA)の戦略部隊の中くらいの階級だとうかがえると話す。戦略部隊は攻撃に使うミサイル武器を担当している。

演出された写真なのはほぼ確実だが、マッデン氏は「完全に作られたものでも、ねつ造でもない」と話す。

「写真係が全ておぜん立てしたというより、むしろ許されて、奨励されたものに近い」という。過去の北朝鮮のプロパガンダ映像には、金委員長への接近が許された市民たちの姿が写っている。

「フレンドリーで明るい」

親しみやすい陽気な金委員長という好印象を国内に広めるのが、この写真の主な目的だろう。

金委員長は、海外に対しては「扱いにくく、妥協しない」人物だという印象を与えようとするが、国内では「話は違う」と、高麗大学のイム・ジェチョン教授は指摘する。

「命令に従わない上層部には非常に厳しいことで知られるが、国民へのプロパガンダのイメージは総じて、フレンドリーで明るい」

金委員長のやり方は、父親の金正日氏や祖父の金日成氏とは大きく異なる。マッデン氏は、「彼の父親だったら、あるいは祖父でさえ、おんぶしてもらう勇気は誰にもなかっただろう」と話す。

「しかし正恩氏は、自分は父親より他人にオープンだというイメージを作ろうとしてきた。この写真も、それに合致する」

「彼が自分の統治や指導力に、政治的な自信をつけてきた感じが伝わってくる。大丈夫だと思わなければ、あのような写真の配信は許さないだろう。もっとよそよそしく冷たい様子を、見せなくてはならないはずだ」

写真からはさらに、金委員長の健康状態が良いことが示唆される。2014年には足を引きずり杖を使っている様子が確認された。足を引きずる様子は、最も最近では昨年末にも見られ、同氏が通風を患っているとの憶測を呼んでいた。

サッカーの試合からのアイデア

勝利を祝って背中に飛び乗る姿は、北朝鮮のプロパガンダ写真よりもサッカーの試合につきものだ。しかし、金委員長は武器開発計画にスポーツ・マネジメントの手法を活用していることで知られる。

「実験の際には、民間人と軍関係者はスポーツの試合のように考える(よう命令されている)。勝つときもあれば負ける時もあるのだと」とマッデン氏は語る。

「『勝利』、もしくは技術的要件を満たせるのは、いつもというわけではなく、もし『敗北』したのなら、自分たちのパフォーマンスと何が起きたのかを検討するべきだと」

しかし、偶然を装うわざとらしさが写真にあるとしても、金委員長が本当に喜んでいないわけではないだろう。

金委員長には喜ぶ理由が十分あったと、イム教授は語る。成功した様子のエンジン実験によって、核開発が目的に向かって一歩前進し、自身の遺産をひとつ確実にしたと思われるからだ。

「プロパガンダ上の記録では、彼の祖父は抗日ゲリラ活動で朝鮮の解放者となった。彼の父親は経済的な困窮のなかでも体制を維持することに成功した。しかし、急に指導者になった金正恩氏には、主要な成果が今のところない。北朝鮮が核保有国になれば彼の手柄になるだろう」

(英語記事 North Korea: Who would dare to piggyback on Kim Jong-un?

提供元:http://www.bbc.com/japanese/39376736

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