2024年4月25日(木)

科学で斬るスポーツ

2017年3月28日

天才肌の山田のすごさ

 もう一人、山田についても触れておきたい。WBCでは27打数8安打2本塁打5打点、2割9分6厘の成績だったが、2次ラウンドで見せた豪快な本塁打はさすがに2年連続トリプルスリー(3割、30本塁打、30盗塁以上を記録すること)の片鱗を見せつけた。

 図6は、昨シーズンの山田のコース、高さ別の打率である。コース別の内角、真ん中の打率がずば抜けて高い。それに比べて若干、外角が弱い。しかし、これは山田に対して相手投手が、本塁打を恐れ、執拗に外角攻めを行うためであり、打率こそ低いが45本の逆方向(つまりライト方向)安打はリーグトップクラス。外角にも対応していることを意味している。

 石橋さんによれば、山田は逆方向への安打について「タイミング次第」「理由はわからならないが、逆方向に打てる時期がある」と天才肌的なコメントをしているという。

図6 昨シーズンの山田のコース別安打数
(提供」フェアプレイ・データ提供)写真を拡大

 しかし、その裏には今までの固定観念にとらわれない努力、打撃理論がある。2014年以降、コーチと二人三脚で取り組んでいるティー打撃は10種類を超えている。(1)体の前でバットをX字、あるいは8の字に振ってから(2)バランスボールに座りながら(3)歩きながら(4)大股スクワットをしながら(5)ワンバウンド(6)後ろから投げる――などユニークなティー打撃を一通りこなしながら試合に臨んでいる。実は体幹強化やバランスを保つのに役に立つ。動くボールなど微妙な変化に、どんなにタイミングをはずされ、姿勢を崩しても対応できる打撃術の源泉となっている。

 筒香、山田の二人の登場は、野球理論はすでに確立して、もう新しいものはないのではないかという固定観念に一石を投じている。科学的な視点で、野球はまだまだ進化できる。そんな野球の面白さを感じさせてくれる。

  
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