WEDGE REPORT

2017年4月4日

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自ら稼ぐ人件費

 品川区社協は、障害者なども含めると累計で約320件の法人後見を受任。件数は増え続けている。現在も約175件を社協で受任しており、所長を除く職員16人で担当している。他の区では成年後見担当の職員は2~3人が常だが、なぜ品川区はこのような手厚い人員体制を構築することができたのか。

 それは極力、社協主体で後見を受任することで、安定的に後見報酬を得る体制を作れているからだ。2015年度は、約8000万円の後見報酬を得たが、後見報酬の伸びを元手に、06年には6人だった職員数を、17人まで増やすことができた。

 人件費を自ら稼ぎ、経済的な自立度は極めて高い。また冒頭でも紹介したように、非常勤だが、実に91人の支援員を雇っている。つまり計100人以上で品川区の高齢者を支える体制が作れているのだ。

 どこの自治体も財政状況は厳しいため、事業を担当する社協職員の配置は十分ではない。東京都墨田区の社協は、都内でも有数の市民後見人の養成者数を誇るが、成年後見担当の職員は3人のみ。社協として法人後見は行っておらず、「区の補助金に頼らず、人員を強化していくためにも、法人後見への着手は喫緊の課題だと考えている」(墨田区社協の藤藪明知氏)。

  品川区社協が後見を受任することで報酬も得られ、かつ職員の側にもノウハウが蓄積されていく。経済的にも職員の経験の面でも、好循環が生まれている。これが品川モデルの強みである。

品川成年後見センターのオフィスは活気に溢れていた
(写真・MASATAKA NAMAZU)
 

*「先進地域に学ぶ成年後見の拠点作り INTERVIEW:「品川モデル」構築のキーマン―認知症700万人時代に備える(PART2)」へ続く(4月4日公開予定) 

【column】プロ集団結成!〝国内初〟の金融機関による成年後見事業
 2015年1月、品川区内に営業店を持つ5つの国内信用金庫(さわやか信用金庫、芝信用金庫、目黒信用金庫、湘南信用金庫、城南信用金庫)が、〝国内初〟の金融機関による成年後見事業法人「一般社団法人しんきん成年後見サポート」を設立した。同法人は、品川区社会福祉協議会と連携し、品川モデルの一端を担う。
 成年後見人の職務の生活支援活動などを行っているが、担当するのは信用金庫の職員OB・OGだ。理事長を務める城南信用金庫相談役の吉原毅氏は、「専門知識豊富なOB・OGが後見人を担う上、税理士や弁護士などとも緊密なネットワークがあり、困難な案件にも手厚い対応ができる」と話す。実際に、入院費を数百万円滞納していた認知症高齢者の不動産物件の売却手続きを行い、入院費・治療費に充てるなど、専門知識を要する事案に迅速に対応している。 「市民後見人が1人でこうした案件を担うのは非常に大変だ。専門知識、豊富な人脈を持って後見人を担うことのできる法人がもっと増えていくことが理想だ」(吉原氏)

【シリーズ:認知症700万人時代に備える】
PART1:東京23区の成年後見格差、認知症への支援を急げ
PART2:先進地域に学ぶ成年後見の拠点作り・前編:品川モデル
PART2:先進地域に学ぶ成年後見の拠点作り・中編:「品川モデル」構築のキーマン・インタビュー
PART2:先進地域に学ぶ成年後見の拠点作り・後編:大阪モデル
PART3:過熱する高齢者見守りビジネス最前線

 

  
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◆Wedge2017年3月号より

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