WEDGE REPORT

2017年3月29日

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朝野賢司 (あさの・けんじ)

一橋大学特任講師

1974年福岡県生まれ。京都大学大学院にて地球環境学博士号を取得。産業技術総
合研究所バイオマス研究センター特別研究員を経て、2007年より電力中央研究所
社会経済研究所主任研究員。2015年4月より現職(兼任)。著書に『再生可能エネルギー政策論 買収制度の落とし穴』(エネルギーフォーラム社刊)など。

アップルはサプライチェーンまで含めて再生可能エネルギー100%を目指している
(写真・JOHN MOORE/GETTYIMAGES)

 したがって、各国事情により企業の再エネ調達コストが異なるため、日本企業を他国と比べた批判は単純化し過ぎである。むしろ、非化石価値の顕在化で、企業が様々な非化石電源を選択し、CDP等で国際的に高く評価される道筋を残すべきであろう。

 第二にCDPは果たして環境負荷の低減として実効性があるのか、必ずしも現時点では明らかではないことである。筆者らは、企業10数社によるCDP回答書を分析した。すると、CDPのランクと各企業による再エネ調達量・CO2削減量等の相関は必ずしも明確ではなかった。

 これは、あくまでCDPは質問票を企業に送付し、回答を開示するプロジェクトであり、回答内容を精査することは一切しない、いわば申請主義にあることによる。大企業であるほど、回答に対する監査事業者の検証を経るため、企業がGHGプロトコルに基づいた正確な回答を行う強力な動機となる。

 一方で、CDPによる環境負荷低減活動の実効性や、国・企業で異なる費用対効果は示されてはいない。つまり、「野心的な目標表明」は、単なる「ええかっこしい」の可能性も十分にある。

 筆者はこれを批判したいのではなく、こうしたCDPのオモテ・ウラを理解した上で、非化石価値取引市場の制度設計を進めるべきという提案である。

 以上の留意点があるとはいえ、電力自由化の中で再エネ普及を整合的に実施するという観点からは、需要家自らが再エネを選択し、その費用負担を行う方向性は目指すべきである。これまで電気価値と一体的に取引されてきた非化石価値を、市場の中で明示的に加味することは、電力システム改革の方向性として間違いではない。

 市場は人工物であり、思った通りに機能しないのであれば仕組みを変える方法を編み出すことが重要である。電力自由化と非化石市場との整合性や、政策目標に対する費用対効果を事前・事後に検証しながら、機動的な制度修正がのぞまれている。

  
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◆Wedge2017年4月号より

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